理系受験者の方でも物理は苦手だ!と感じる人や、どの参考書を手に取ればいいのかわからない、なにから勉強すればいいのかわからないといった人も多いのではないでしょうか。
そんな方々に受験生時代実際に使っていた筆者がオススメするのが『物理のエッセンス』です。
この記事では、『エッセンス』の効率的な使い方や『エッセンス』ってぶっちゃけどうなの?という人のために筆者の体験談を踏まえたコラムも書いているのでぜひ参考にしてください!
・理系の東大生が執筆
・実際に『物理のエッセンス』を愛用していた
・東大物理の本番は50/60点という東大の中でも神レベル
「物理のエッセンス」の基本情報
『物理のエッセンス』は物理選択の受験生は必ず手にした方がいい参考書です。
本書は二冊構成で「力学・波動」を扱ったものと「熱・電磁気・原子」を扱ったものがあります。章の初めに各分野で使う公式とその解説が書かれています。そしてその公式を使って解く練習問題が収録されています。
どちらもそこまで分厚いものではありませんが、受験物理を理解する上で必要な情報が効率よくまとめられているため、繰り返し読み込むのに適しています。
難関大学を受験するためには難しい問題の演習も必要ですが、まず一番大切なのは基礎固めですよね。その基礎固めに最適なのがこの『物理のエッセンス』です。
著者プロフィール
浜島 清利
河合塾物理科講師 主に中部地方を中心に講義を行う。
著書に『物理のエッセンス』・『名問の森』・『浜島清利 物理講義の実況中継』など。
難易度は難しい?
『物理のエッセンス』の難易度は他の有名な演習書、例えば『名問の森』や『難問題の系統とその解き方』と比べればずっと簡単です。
けれどナメてかかってはダメです。
『エッセンス』の後に使用する演習書をこなしていくためには『エッセンス』に書かれてあることを深く理解する必要があります。
逆に言うと『エッセンス』を簡単だと自信を持つことができるようになれば、より難しい演習書・参考書にレベルアップしてもいいかもしれません。
問題数は多くはない
ですので公式を使って基礎的な問題を解くという練習には向いていますが、より複雑な問題に対応するにはさらに難易度の高い演習書で勉強する必要があるでしょう。
しかし「こういう問題にはこの公式を当てはめるとうまく解けるんだ」という物理受験において大切な「勘」を磨くには十分な量と種類が揃えられています。
解説は丁寧
例題などを使って間違いやすいミスを指摘してくれたりするため何かと痒いところに手が届くと感じる人も多いのではないでしょうか。
また、使う公式の一覧が巻末に収録されているため、そこを参照しながら解説を読めば理解しやすいですし、シンプルにまとまっているため後々見直したいと思った時にも簡単に復習ができます。
「物理のエッセンス」を使うべき人は?
早い時期から鉄緑会などに通って演習能力を鍛えられている人は必要ないかもしれませんが、それ以外の人たちは少なくとも一通りは目を通しておいたほうがいいように思います。特に難関大学受験者ははじめから難しい問題集に飛びついてしっぺ返しをくらうということが多々あります(筆者自身もそうでした)。
物理という科目はいかに基礎的な公式を理解しそれを使いこなせるかにかかっていると思います。簡単だと思う公式も「なぜこのような公式になるのか」「この公式とこの公式はどのように関連しているのか」というようなことが『エッセンス』に書かれていることを参考にしながら考えていくといいでしょう。
なんとなく公式を覚えているだけで問題を解く時や解説を読んだ時に考えが上滑りしているなと感じる受験生は、基礎を大切にする姿勢でぜひ『エッセンス』を読んでみてください。
「物理のエッセンス」の理想的な学習時期は?
次に、「物理のエッセンス」を使うべきタイミングについて解説していきます。
「物理のエッセンス」をいつから使い始めるか
例えば筆者の場合だと高校二年生までは英・数・国の主要三科目を中心に勉強し、高校三年生から理科の勉強を本格的に開始したのでそこから『エッセンス』を読みはじめました。
それまで学校の定期試験などでなんとなく理解していなかったところや、忘れてしまった公式などを一気に勉強することができるので物理の力がついているのを実感できました。
物理選択だけど勉強の始め方がわからないという人は『エッセンス』を手に取るといいでしょう。
「物理のエッセンス」はいつまでに終えるか
難関大学や最難関大学を目指す人にとってはあくまでも『エッセンス』は基礎的な参考書です。受験対策にはより難しい問題集に取り組む必要が出てきます。
ですので、大手予備校の模試がたくさんある高校三年生の夏休みまでには『エッセンス』を少なくとも一周しておくというのが筆者のオススメする勉強計画です。
夏休みの模試は自分の実力を試す絶好の機会なので基礎的なことは頭に入れておいてから挑戦しましょう。逆に『エッセンス』を一周もせずに基礎を理解しないまま模試や過去問などに挑戦するのはもったいないです。幸いに『エッセンス』はそこまで分厚い問題集ではないのでまずは一通り解いてみるといいかと思います。
また受験期が近づいて難しい問題集や過去問演習をしている際に、どうしても自分が苦手だなと感じる分野が見つかると思います。
受験が近いからと焦ることなく落ち着いて基礎を復習することで複雑な問題にも対応できるようになります。
「物理のエッセンス」の効果的な使い方とかある?
ここでは「物理のエッセンス」を使うにあたってのマインドセットや効果の出る実践的な使い方を解説していきます。
公式の網羅と把握
繰り返し述べますが、受験物理において公式を理解しておくというのは大前提です。
『物理のエッセンス』は基礎公式が見やすく収録されているため、公式を覚えるのに最適です。また本自体が薄いので電車の中など移動中に見返したりするのにも適しています。
また、公式の解説もしてくれているので「ただ覚える」のではなく本質的に理解することを手助けてくれます。
公式の基本的な使い方の練習
『物理のエッセンス』に収録されてある問題はどれも短く本格的な演習問題としては物足りないと感じる人が多いかと思いますが、基本公式をどのように当てはめて問題を解くかという練習には向いています。
複雑な問題も根本的にはこの「公式を上手に使う」ということを応用させることで解くことができます。受験物理に取り組む「勘」を鍛えるトレーニングを本書で行うことができます。
受験期における苦手分野の復習
たくさん演習量をこなす受験期において、「自分はどの分野でもっと得点を伸ばすべきか」という自己分析を行うと思います。先に述べたように、その苦手分野の基礎を復習するのに『物理のエッセンス』はオススメです。
よく間違う分野やあまり理解していない分野というのは、演習不足というよりも往々にして公式の本質的理解が足りないというのが原因だと思います。
筆者は電磁気の分野が苦手だったのですが、それは公式をただ数式として覚えているからで「なんでこの公式になっているのか」という本質的な理解が足りてないからだと気がつきました。それから焦らずに『エッセンス』に立ち返って復習をしてから電磁気問題での間違いが減りました。
単元別の使い方
「物理のエッセンス」の実践的な使い方を単元別に紹介していきます。
力学
「力学」の分野は英単語帳の最初のページと同じく、どの参考書においてもはじめの単元として解説されているので、どの受験生も目にする機会が多く、その分みんながある程度得意とする分野だと思います。
また「電磁気」や「原子」などと違い、物体の動きなどは誰でも想像がしやすいため公式を理解することも比較的簡単なのではないでしょうか。本書でも「力学」は最初に掲載されてある単元です。
「力学」だけをさらさらっと解いて物理ができる気になり「電磁気」などの後々の単元をおろそかにして後で痛い目を見るという筆者の二の舞にならないように気をつけてください。
むしろ「力学」が得意だと自負する方は「力学」を後回しにしてみるのも一つの方法かもしれません。
電磁気
一方で「電磁気」はそこまで得意ではないという受験生も多いのではないでしょうか。
そういう方は繰り返し述べている「公式の本質的理解」や「問題における公式の使い方」を学ぶために『エッセンス』を納得がいくまで使用するのがいいと思います。
苦手な分野ほど難しい問題集に取り組んで演習量を増やしたい気持ちに駆られますが焦らないのが一番です。
波動
「波動」の分野は、波が時間とともに移動するという点で、はじめのうち想像しづらく戸惑う受験生もいるかもしれません。
また、どの問題集においても問題数がそこまで多くないので、よくわからないまま演習問題を消費してしまったという状況に陥りやすいです。
難しい問題にも対応できるように本書を使ってトレーニングするといいでしょう。
熱・原子
「熱」「原子」の単元は最難関大学においてもそこまで複雑な問題は多くないので、基本定理を覚えておけばそこまで苦労しないかと思います。
ですが、演習問題の絶対量が少ないので、『エッセンス』で基礎を覚えてからより難しい問題集に取り組んでみてください。
「物理のエッセンス」が終わったらどうする?
先に述べた通り『物理のエッセンス』は受験物理を勉強する上で大切な参考書ですが、難関大学以上を受験する人はこれだけでは足りません。
筆者は『エッセンス』の後『名問の森』に取り組み、その後『難問題の系統とその解き方』いわゆる『難系』を使いました。
理想としては『難系』を一周してから過去問演習に取り掛かりたかったのですが、なかなか時間が許さなかったため受験期は『難系』と過去問を同時進行的に解いていました。
コラム:「物理のエッセンス」でよくある質問
基本的には以上で「物理のエッセンス」の解説は終わりです。
ここでは最後に「物理のエッセンス」に関してよくある質問を紹介し、それに対して回答するコラム形式の解説をしていきます。
「物理のエッセンス」は共通テストに対応しているか?
繰り返しになりますが、『物理のエッセンス』は基礎を固めるのに適した教材です。そのため共通テスト(筆者の頃はセンター試験でしたが)の勉強に使う参考書としては非常にオススメできます。
『エッセンス』に収録されている問題を完全にこなすことができるようになるだけで、共通テストにおいて8割以上の点数は確約されているとも言えます。
もちろん、共通テストが行われる1月までには『エッセンス』よりもレベルの高い問題集に取り組んでいる受験生がほとんどだと思います。
しかし二次試験対策とは別に、共通テスト直前に過去問などを解く練習も行うでしょう。その際に間違えた箇所などを手っ取り早く復習できるのが『物理のエッセンス』です。
「物理のエッセンス」はどれくらいで1周すべき?
筆者の経験としては『物理のエッセンス』は受験生の夏休み前までに1周しておくというのが余裕を持った勉強計画だと思います。
夏休みは受験生が一番勉強する時期ですよね。その時までに基礎である『エッセンス』を終わらせておくことで、『名問の森』などの本格的な演習問題集に腰を据えて取り組むことが可能になります。
また早い段階でとりあえず1周しておくことで、自分はどの単元を理解するのに手間取ったか、逆にどの範囲なら難易度の高い問題と当たっても対応できそうかなどといった分析もできると思います。そのような良い意味での余裕を持って夏休みの模試に備えておくことで効率的に力をつけることができます。
「物理のエッセンス」は受験本番までに何周すべきか?
筆者は受験までに『物理のエッセンス』を2周、苦手だと感じていた「電磁気」の範囲は3周しました。
『エッセンス』は問題集としてそこまで分量が多いわけではないので、一度1周してしまえば2周目以降はそこまで時間がかかるわけではありません。1周目で間違えた問題にチェックをしておいてその問題を理解できるまで繰り返し解いたとしてもそこまで膨大な時間を要するわけではないと思います。
物理が苦手だなと感じている人の中で、公式は理解しているけれど複雑な問題に対応できないという人は演習問題を解く練習をすればいいと思いますが、問題に対してどの公式を当てはめればいいかがわからないという人は『エッセンス』を複数周こなすことをオススメします。
また、1周終わった後に他の問題集にレベルアップし、どこかわからないところや不安な箇所があれば『エッセンス』に少し立ち返ってみるという方法もオススメです。何れにせよそこまで分量がある問題集ではないので面倒がることなく基礎を大切にしてください。
「物理のエッセンス」をゴミとか批判している人は何?
『物理のエッセンス』をゴミだと批判する人が周りにいる場合、その人を哀れんであげましょう。
塾などに通っていて『エッセンス』を使っていない人でも、本当に物理ができる人ならば『エッセンス』を手放しにバカにはできないはずです。受験物理において基礎を完全に頭に入れておくことは何よりも一番大切です。
なぜかというと、たとえば東大物理の問題構成のように、受験物理の問題は一見どれほど複雑に思われようと難しい答えを一発で導き出せと受験生に要求する問題はあまりありません。受験問題の大問はおおかたたくさんの小問で構成されています。その小問に導かれながら最終的に難しい問題を解くというのが受験物理の解答方法です。
そのためには一番はじめの小問を正解することが絶対条件です。小問(1)を間違えてしまうと大問まるまる(東大だと20点程度)吹っ飛ぶことがありえてしまうんです。難易度の高い問題を正解できることよりも簡単な問題を落とさないことの方が大切だとも言えます。ですから、物理において基礎は絶対的に重要です。
一つ一つの小問を確実に正解する、そのために必要な知識というのは『物理のエッセンス』に収録されてある基本定理の応用です。つまり定理をいかに深く理解しているかが問われることになります。
応用の仕方などは実践的な演習書で練習すればいいと思いますが、演習ばかりやって定理を感覚で使っているといつか痛い目にあいます。
何事も基礎が重要ですが、受験物理においてはそれが顕著だということを頭に入れて、焦らずに勉強してください!