「東大漢文の対策法がわからない」「東大漢文は何の参考書使って勉強すればいいのか」こうした悩みを抱えている受験生は多いと思います。
実際漢文の勉強は後回しにする人が多いのですが、早くから対策しておけば安定して高得点をとることが可能です。
そこでこの記事では、実際に東大を受験した経験をもとにどのような方針で東大漢文の勉強をすると良いのか、その一つの方針を説明しようと思います。
・2016年東大首席合格者が執筆
・東大文学部の学生が監修
・100人以上の東大生に勉強法をインタビューしてきたメディア
東大漢文の基本情報
ここでは最初に東大古典の基本情報をみていきます。
一応それぞれコメントをつけていますが、基本情報を知ってる方は途中の対策法まで読み飛ばしてもらって大丈夫です。
配点
つまり、古文や現代文の大問と同程度に重要な出題分野ということがわかります。
決してさぼるわけにはいかない点数配分ですが、点数をとるために必要な努力は他科目と比べてそこまで多い訳ではないので、素早く取り組む価値があるでしょう。
難易度
学生「東大ってどれくらいの難易度なの?」「東大入試は難易度高そうだからやめとこうかな…」「実は基礎問ばかりって聞いたけど嘘だよね?」 こういった疑問や悩みを持つ方は多い。 […]
傾向
通釈の問題だけでなく、説明問題もありますが、指定の箇所の通釈ができていれば難しくありません。
ただし、大方の意味がとれても細かい単語の意味を正しく推定しないと完答ができない問題もあった気がします。
出典
東大漢文の出典はこんな感じですが、ここから読み取れることは特にありません(笑)。
2015年 | 紀昀『閲微草堂筆記』 |
2014年 | 司馬光『資治通鑑』 |
2013年 | 金冨軾『三国史記』 |
2012年 | 『春秋左氏伝』昭公二十年 |
2011年 | 白居易「放旅雁」 |
2010年 | 文瑩『玉壺清話』 |
2009年 | 万里集九『梅花無尽蔵』 |
2008年 | 兪樾『右台仙館筆記』 |
2007年 | 陶宗儀『輟耕録』 |
東大漢文の対策法
ここからは受験生が気にするであろう項目ごとに、実際にやっていた東大漢文の対策法を解説していきます。
単語
多くの参考書で軽視されがちですが、英語や古文と同じく漢文においても単語もしくは漢字の知識というのは重要です。
東大漢文はそこまで難しい文章が出題されることがなく、難しい漢字には脚注がつくことも多いです。
しかし、もちろん知らない漢字の全てに脚注がつくわけではなく、さらに知っているつもりの漢字でも現代とは異なる意味合いで使われているものもあります。
そこで、漢字の知識量を増やす作業が必要になるのですが、少なくとも僕の現役時代にそういった参考書はありませんでした。ですので、基本的には演習を積んでいく中で知らない漢字を逐一調べて覚えることにしていました。
調べるということになると漢和辞典が必須になるわけですが、僕は「新選 漢和辞典」を使っていました。
この辞書は漢字の意味を網羅的に掲載しているだけでなく、その字を含む熟語や例文などを通釈付きで載せていたので勉強になるだけでなく、雑学書的な面白さもありました。
とはいえ、結局単語の知識を完璧に積むことはできなかったので、文脈や字の形から意味を予測するといった作業の重要性が薄れることはありませんでした。
長文読解
東大に限りませんが、漢文の出題形式は基本的にワンパターンで、長文、と呼べるほどに長くもないひとまとまりの文章を読み、その文章に対する理解を問ういくつかの問題が出題されるというものです。
記述の仕方によって余計な失点を生まないためにも最低限のトレーニングは必要だと思いますが、基本的には読めれば解ける、読めれば点が取れるということにすぎません。ですので、東大漢文でも与えられた文章をいかに意味の取り違えをせずに読めるか、ということが最も重要です。
そのために前節の漢字に対する知識が重要になる訳ですが、おそらく出題者の方も別に漢字の意味を知っているか知らないかで差を付けようとは思っていないはずです。その証拠に東大漢文では誰がどう見ても読めない漢字には脚注がついていることが多いです。
句形の知識は当然完璧にすべきですが、状況をイメージしながら解釈に幅のある表現などを慎重に読み進めていくことが大事です。
個人的にも、この読解に一番苦労していたので、「漢文の読み方」というあまり多くの受験生は読まないであろう本を手に取ったりしていました。
この本を読んだ理由は、ただ漢字の知識や句形の知識をつけても文章の意味がとれないのはおそらく時代背景や当時の文化に対する理解が甘いからだろうと思ったからです。僕は文系で世界史選択をしていたので、(中国史を習ったという点で)理系の受験生より有利ではあったと思いますが、それでも十分だと感じてはいませんでした。
あとはひたすらたくさん読むしかないだろうと思って、指定教科書を読んだり、図書館に通って「韓非子」、「孟子」、「墨子」、「老子」などの諸子百家を読んだりしていました。
東大漢文の本番ではそうした有名どころから出題するのは避けられている気がするので、読んだものがそのまま出るといったことはありませんでしたが、それでも良い演習にはなったかもしれません。
記述
何よりもまず文章の意味を取り違えないことが大事だということを前節で書きましたが、東大古典においては実際には読めても記述が不正確なために失点を生むということも多いでしょう。
これについては後述の問題集(『得点奪取漢文』や『漢文道場』など)の解答例や解説を読みながら、練習を積んでいけばいいと思います。
そのときにただ○×をつけるのではなく、解答例と自分の解答にずれがあるときに生じたはずの情報の取捨選択のずれを発見し、次に活かそうとする態度で臨む必要があると思います。
東大漢文で他に気を付けることは、文章の読解が不完全なときですが、これはある程度当てずっぽうの解釈で解答するしかありません。ただ、解釈が二、三通りに絞られているというような状況ではどちらともとれる攻めすぎない解答を作るみたいな小手先の悪あがきをよくしていました。
東大漢文対策におすすめの参考書
ここでは実際に使っていた東大漢文対策におすすめの参考書を紹介していきます。
漢文道場
漢文の参考書や問題集というのはそこまで多くはなく、その中でも質の高いものとなるとかなり限られてきますが、「漢文道場」は漢文を大学受験に用いるほぼ全ての人が使って損のない問題集だと思います。
それに一冊に収録されている問題の量も多いのでコスパが良いです。
文章の難易度も良い意味でばらけていたような気がします。
得点奪取漢文
こちらも漢文道場と同じく、良質な問題集です。
得点奪取シリーズ全体に言えることですが、文章は比較的平易で、各設問の採点基準が明示されています。
人によって好みが分かれると思いますが、河合塾の採点基準はポイント採点で、この部分が解答に含まれていないと減点といった採点基準なので中々完答は難しいです。
個人的には記述する際に細かい配慮ができるようになったので、良かったと思います。
国立大の漢文 (高校上級用)(1日1題30日完成)
こちらは上二つと比べてかなりマイナーな問題集ですが、Amazonでめちゃくちゃ安かったので買いました。
あまり強い印象が残っている訳ではないですが、良い問題集だったと思います。
漢文の問題集は絶対数が少ないので、演習不足に悩んでいる人は手に取る価値ありです。
東大漢文の過去問の使い方
過去問というと「東大の古典 25ヵ年」とかだと思いますが、漢文に関しては多分25ヵ年全部を解く必要はないと思います。
あくまで僕の現役時代の話なので、もう古くなっているかもしれませんが、古くまで遡ると東大の出題形式が変わってきて(大問が7つあった頃)、漢文の出題傾向も変わります。具体的には漢詩が出題されるようになります。
僕は漢詩が出題される可能性も考慮して一応解きましたが、多分必要はなかったと思います。でも漢詩も読んでいると段々情緒が分かってきて楽しかったです。
過去問の解き方に関してですが、僕は普通に問題集を解くノリで使っていました。特に本番を意識して時間を測ったり、現代文や古文と一緒に解いたりすることもなく、気が向いたら解くくらいの軽いノリでした。
ただ、解く時期については多少考えていて、高3の夏休みくらいに解き始めて秋ごろには一周終わるようなペース配分で解いていました。秋以降はセンター対策に集中したいからという理由です。
過去問を二周以上すべきかどうかについては、人によって意見が変わると思うのですが、僕はやりませんでした。一回読んだ文章をもう一度読むより、新しい文章を読む方が学びが多いと思っていたからです。
なので解ききってしまって、まだ演習したりない場合は二周目をやるより、他大の過去問に手を出したり、あとは東大実戦や東大オープンの過去問を解いたりする方が個人的にはおすすめです。
まとめ
この記事では主に東大漢文に向けての勉強法、対策について解説しました。
東大の漢文は癖がなく、素直に文章を読み解く力があれば特に苦労する点はないはずです。東大の漢文の対策をしていれば、自ずとセンター漢文(今は共通テスト?)の方の得点も安定してくるはずです。
もちろん、この記事で説明した方法が唯一の方法ではありません。それぞれの勉強法が確立しているなら、それを大事にしてほしいと思います。
しかし、「幾何学に王道なし」です。どのような勉強法をとるにしろ、最も本質的な部分はいつだって泥臭い作業の積み重ねです。そんな泥臭さもいつか懐かしめるように、そんな願いを込めて締めくくりとさせていただきます。