この記事では今年東大に合格した理系東大生の筆者が、東大理系数学の対策法だけでなくおすすめ参考書や問題集も事細かに紹介しています。
塾・予備校に通っている人はもちろん、独学の人でも実践できる内容となっていますので是非最後までご覧ください。
・今年合格した理系東大生が執筆
・細かい過ぎるくらいに徹底解説
・東大首席など100人以上の東大生に勉強法をインタビューした管理人が監修
東大理系数学の特徴
最初に東大理系数学の特徴を確認していきましょう。意外とここでの情報収集や戦略立てが重要なのでじっくり読んでみてください。
形式
小問はあったりなかったりしますが、ある場合は大体次の小問を解くためのヒントになっています。
小問に込められた出題者の意図を見抜くのが難しい事がしばしばあります。
配点
各小問では、重要度や難易度が高い問題の方が恐らく高い配点がついていて、例えばある大問に小問が2つあり前半は誘導問題で後半がメインの難しい問題の場合、⑴8点 ⑵12点で合計20点にしているのだろうと考える人が多いです。
東大模試や過去問でも大体そのように考えて書かれています。
合格者平均点
ただ、東大理系数学は、得意不得意やその年の難易度によって合格者の間でも得点には大きく差があります。
例えば理1.2なら僕が知っている限りでも、30点台前半で受かった人もいれば80点後半でも落ちてしまった人もいて、なんとも言えないというのが正直なところです。
しかし、僕が受験生時代に持っていた予備校の資料をみると(外部に漏らしてはいけないので詳しい事は言えませんが)、理科1類・2類なら80点、理科3類なら90点を超えてくると一気に不合格者の割合が低くなるなという印象を強く受けます。
目標点
以下、ここ10年の合格最低点や平均点の推移から算出した、大体の目安となる基準を僕から提案しておきます。
志望が理1.2か理3か、目標が最低点ギリギリか合格者平均点か、東大理系数学は得意・普通・苦手のどれかで分類してみました。これを参考に自分で調整してみて下さい。
理科1類・2類志望
⑴合格最低点付近狙い
目標は1完3半
数学が得意なら+5〜10点、
数学が苦手なら-5〜10点
⑵合格者平均点狙い
目標は3完、2完2半
数学が得意なら+5〜10点、
数学が苦手なら-5〜10点
理科3類志望
⑴合格最低点付近狙い
目標は4完、3完2半
数学が得意なら+5〜10点、
数学が苦手なら-5〜10点
⑵合格者平均点狙い
目標は5完、4完2半
数学が得意なら+5〜10点、
数学が苦手なら-5〜10点
時間配分
一部の人たちを除けば時間内に全ての問題を解き終わる事は難しく、得点を最大化するための時間配分戦略は非常に重要です。
これは本当に人それぞれで、過去問演習や模試を通して自分にあった戦略を試行錯誤して見つけていくしかありません。
東大理系数学対策でよく見かけるのは、まず各大問5分ずつ使い、開始直後の30分を難易度や手間の見極めに費やしてがっつり取り組む問題を決め、間の1時間半はそれらに注力し、最後の30分は解けた問題の見直しや解けなかった問題の解答用紙に分かったところまでの答案を書くようにするという方法です。
一番避けるべき事態は簡単かつ手間のかからない問題を落とす事です。東大理系数学にはどんなに難しく思えてもほぼ必ずそのような問題が含まれいるので、最初の30分でそれを見つけ出しましょう。
間の90分では、まず先程見つけた簡単な問題を確実に片付けると精神的にも波に乗ります。次に取り組む問いとしては、方針は分かったが処理量の多い問題よりも取っ掛かりが難しいけれど分かれば楽に解ける問題が良いでしょう。
最後の30分は焦り等から思考の精度が鈍るため、新しく問題を解き始める事はしないようにしている人が多かったです。途中ミスったせいで後ろが雪崩のように間違いになり、10点以上が一瞬で吹き飛ぶなんて事態を避けるために、日頃から自分のケアレスミスを収集分析してチェックリストを作り、本番ではまずそのリストに載ってるミスをしていないか確認するのはオススメです。
また、白紙は0点確定なので何がなんでも避けましょう。正答の糸口にはたどり着けずとも自分なりに考察した事柄はあるはずなので、それを頑張って書いて下さい。
東大理系数学ではなく東工大数学での話ですが、周りの受験生の出来が悪すぎたせいで、「数学的帰納法で解く」と記述した生徒に30点満点中10点が与えられたなんて事が実際にあったようです。自分の持てる全てを採点官にぶつける習慣をつけておきましょう。
長くなりましたが、時間配分に関しては
1. 演習を通して自分なりの戦略を立てよう
2. 30分で取捨選択→90分で目標とする完答数を目指す→30分は見直し等の仕上げ、はおすすめ。
の2点に集約されます。
計算力
東大理系数学において計算力、正確にいうと処理能力はかなり重要です。特に、多数の場合分けや数式を混乱せず扱い切る力、数3範囲での重厚な計算をやり切る力が必要となります。
これに関しては日頃から面倒くさがらず果敢に手を動かして答えを合わせきる修練を積むしかありません。
以下、ワンポイントアドバイスとしては、
・場合分けは樹形図みたいにしてメモっとく
・等式や不等式が複数出てきた時は全てを{ ←この記号でくくったまま同値変形していく(連立方程式と同じ)
・数3の計算手法はフローチャートを作って完全に頭に叩き込み、またいくつかの頻出計算は覚えてしまって暗算できるようにする
と、僕の場合は処理能力が格段に上がりました。
僕以外にもやってる人いたし、読者の皆さんにも効果があるかもしれないのでぜひ試してみて下さい。
難易度
しかも、一部の医学部入試問題のような小難しさというよりは、難しいが良問というものがとても多いです。したがって、試験中には解けそうにない難問であってもじっくり研究する価値は十分あります。
2010年代前半の東大理系数学はかなり難しい問題が揃っていましたが、2016〜2018は易化しました。(特に2017!!)ところが、2020はそこそこ難しくなりました。
このように難易度はかなり変動するので、当日簡単だったり難しかったりしても慌てず、周りも同じ状況だと思う事が本当に重要です。(毎年メンタル崩して爆死する人がいるので)
東大理系数学の平均的な難易度を知りたければ2015年度の過去問を解いみてください。
出題傾向
もう既に色んな予備校やネットのサイトで言われていると思いますが、ずばり通過領域・立体求積・複素数・整数・確率の5つです!
ただし、確率は昔はほぼ毎年出ていたのですが、2018〜2020の3年間は出題されませんでした。もしかしたら頻出分野から外れたのかもしれません。
各分野の対策法については後ほど述べます。
東大理系数学の分野別対策法
以下では東大理系数学の対策法を分野別にお伝えしていきます。
通過領域
処理量が重い事が多いですが、やり方は決まりきっているのでひらめきがいらず、是非とも得点源として欲しい分野です。
解き方は
という流れになります。
①逆像法はx,yを定数とみて、パラメータの存在条件を求める手法です。まずはここから考えましょう。①よりも楽に解ける事が多いです。
②は、xを定数とみてy=f(パラメータ)の最大最小を調べる手法です。ファクシミリの原理等と呼ばれている事もありますが、どちらも同じものです。逆像法では解けなかったり、順像法で解くように誘導されている問題もありますし、立体求積にも活きてくるので、必ず身につけるようにしましょう。ベクトルの終点の存在範囲もここに場合分けが多くなりがちですが、気合い入れて処理しましょう。
③初等幾何というか、小中学生でもできるような素朴な図形的考察を言葉で記述しつつ解く手法です。世間では①と②しか解法が無いと言われがちですが、実はこれでないと解けない問題がちょくちょくあるので、この解法も絶対に頭に入れておいて下さい。実際2020年の第2問で出題されました。この解法を使う問いの問題文は、この存在する範囲を図示せよというより、存在する範囲の面積を求めよというものばかりな気がします。
この3つの解法を使い分ける事を意識して問題演習に取り組んで下さい。『入試数学の掌握』の青いやつは絶対にやりましょう。
入試数学の掌握 テ-マ別演習2 各論錬磨編 /エ-ル出版社/近藤至徳
立体求積
重い積分計算を完遂できる能力の重要性のみが強調されがちですが、図形的考察も非常に大切です。ここでは考え方全てをまとめきる事はできませんが、とにかく数をこなして自分なりに分類してみて下さい。
どう断面を切ると計算が楽になるか考えながらやると良いです。あと、回転体の体積を求める時に公式を間違えないようにしてください。
複素数
数年前に教育課程に復活して以来、東大が好んで出題している分野です。
高校数学の複素数の世界を記述する方法には①図形的考察②極形式③共役複素数④成分表示の4つがあり、よくある問題のパターンとしては⑴形状決定⑵絶対値の最大最小⑶通過領域⑷数列の極限⑸方程式やその解の配置の5つがあります。
東大や京大、一橋大学の過去問をやりながら4つの考え方の使い分けを意識して取り組んでください。難しいことも多いので本番では捨てることになるかもしれません。
整数
昔から東大が出題し続けてきた分野ですが、難しい問題は際限なく難しく、解法も多種多様であり、また本番では解けそうで解けなくて時間を大量に溶かしやすいです。
そのため、汎用性の高い典型的な考え方はしっかり身につけて、あとは他の分野の対策に力を注ぐほうが当日の点数向上に繋がる気がします。
整数問題に取り組む際の基本的なスタンスとして、
②必要条件で絞っていく
③絞りきれなかったら場合分ける
の3つを意識すると良いと思います。
①では、「周期性はないか?」と意識する事を忘れないようにしたいです。東大の整数問題には周期性が鍵なものが他の大学に比べて多いです。
②では、
⑴約数・倍数の関係、剰余類の導入
⑵不等式で評価する、
⑶実数範囲で考えてみる
の3つの考え方があります。ほとんどの場合⑴か⑵で上手くいきます。
③では、ベストな解き方でも場合分けが複数出る事があります。また、たとえ上手い解法が思いつかなかったとしても、根性で全ての場合を書き出せば満点になります。この精神は割とまじで重要です。
確率
最近出題頻度が激減していますが、以前はほぼ毎年出ていた分野なので一応対策しておきましょう。
まず、問題文をしっかり読んで、状況を絵に起こしながら理解する習慣をつける事をおすすめします。模試の終わりに「解き方わかったけどケアレスミスしてもーた」とか言ってる人がよくいますが、こういう習慣怠っているため単に状況把握力が低いというケースばかりです。
解法は大きく2通りあり、
② 漸化式を立てず、事象の場合を直接数える
となります。(場合の数の問題でも漸化式を考えましょう!)
①では、場合分けを最初にするのか最後にするのか等に気をつけましょう。また、漸化式を立式した後の計算は呼吸のようにできるようになりましょう。
②では、樹形図や組み合わせ以外に、格子点に対応させて考える方法も東大では頭に入れておくべきです。離散変数が2個以上あって、特にそれに不等式の条件がついてたら、これを疑ってみましょう。
難問・悪問の処理
先ほども述べたように、東大数学において制限時間内に解けそうにない問題を捨てる事は非常に重要です。
悪問はほぼないですが、大体かなり難しい問題が混ざっていて(しかも数学オリンピックと違って難易度順に並んでいない!!!)、これらに圧迫されて正答できる問いを取りこぼしてしまうなんて事が起きたら最悪です。
取捨選択の能力は実戦演習以外にも、普段難問に対してじっくり向き合いどのような部分が難しいのかを考えている事でも身につきます。東大の過去問は教育効果の高い問題になっているので、実戦では解かないからといって避けたりせず、考える事に全力である姿勢を心がけましょう。思考力向上だけでなく実戦で捨てるかどうか判断する力も養えて一石二鳥です。
実戦ではどんな問題でも白紙にせず、自分が考えた事はテスト終了時刻までに書いておくようにしましょう!
東大理系数学対策におすすめな参考書・問題集
以下では東大理系数学の対策におすすめする参考書や問題集を紹介していきます。ただてきとーに紹介するのではなく、下の①から③の目的別に1冊ずつ紹介していきますので、ご自身の実力や力をつけたいところを意識しながら読んでみてください。
② 典型問題
③ 実戦演習
①の段階
まず、解放暗記に役立つ参考書・問題集から紹介していきます。
代表的なのは3つあります。どれか1つをやると良いでしょう。どれをやるにしても例題を写経するだけで良いですが、その代わりにしっかり理解しましょう。分からない部分があったら立ち止まってちゃんと考えて下さい。
\参考書を買うお小遣いが欲しい高校生にオススメ/
チャート式
チャート式基礎からの数学3 改訂版/数研出版/チャート研究所
もしかしたら日本で一番有名な大学入試の参考書ではないでしょうか?赤でも青でもOKです。
フォーカスゴールド
有名な進学校ではこれが配られるようです。たまにチャートとフォーカスゴールドを両方やろうとする人がいますが、どちらかだけで良いです。
一対一対応
チャートよりもちょっと入試対策寄りの内容になっていますが、別にチャートだけでも良いです。僕はこれをやりました。
②の段階
①の段階で理論上はほぼ全ての入試問題を解けるようになっているのですが、恐らく標準レベル以上の入試問題と対峙すると手も足も出ない方が多いでしょう。この段階で、①で集めた入試数学を構成する部品の組み合わせ方の定石を学んでいきます。東大理系数学対策のために、この辺りの問題は反射的にできるレベルになるよう繰り返し解いてください。
やさしい理系数学
タイトル詐欺として有名で、実際全然やさしくありません。しかし、確かに東大理系受験生はここに載ってる数学問題はやさしいなと感じるレベルまで最終的には持っていかなければならないのも事実です。
別解が豊富なのが魅力的ですが、解答はめっちゃ簡素で思考のポイントが載っているわけではないし、汎用性が無いなと感じる解法もあります。まあ、それを加味してもやってて良かったなと思いましたし、力もつきました。
僕は元々数学がまったくできませんでしたが、これを8割くらいこなして迎えた東大オープンでは平均点を超す事ができました。
(ちなみに、第6.7章の微分法、積分法はやらなくて大丈夫です。第5章も例題だけで大丈夫です。)
新数学スタンダード演習
やさしい理系数学よりも分量が多めです。僕はやさしい理系数学をやりましたが、この参考書の中身を見た感じ、こっちをやっても良かったかもしれません。実際、この参考書で東大理系数学対策をした東大合格者も多いです。
③の段階
ここからが本番です。まずは『入試数学の掌握』に取り組む事を非常におすすめします。
か
入試数学の掌握
神参考書です。入試では超重要(というか数学全てで)なのに高校や他の参考書ではなぜか詳しく語られない述語論理に焦点を当て、文部科学省の学習要領的とはまったく違った視点から入試数学を眺める本です。
赤と青の前半は必ずやって下さい。まずは例題を一周しましょう。東大理系数学対策のために、青の後半もできればやりたいです。緑はかなり余裕のある人だけ良いです。
この本が執筆された時の教育課程には行列があったので、この本にも行列が出てきますが、その部分はスルーして良いです。
東大数学で1点でも多く取る方法
東大数学対策の参考書として有名ですね。解答を書き始めるまでの思考過程がとてつもなく丁寧に書かれおり、非常に価値ある内容となっています。
ただ、実際出題された問題をどの分野の道具を使って解けば良いのか考えるところが重要なのに、予め分野毎に分類されてしまっているのがネックです。
鉄緑会東大数学問題集
東大理系数学の過去問はこれが断然おすすめです。
価格はかなり高いですが、それに見合う内容となっています。豊富すぎる別解、正しい時間配分の戦略、詳しい採点基準、取捨選択に関するコメントなど、圧倒的な情報量です。他の科目の過去問はともかく、東大理系数学に関しては鉄緑会シリーズに課金した方が良いです。
今回は東大数学満点の理科三類Kotaくんに勉強法やおすすめ参考書をインタビューしてみました。■この記事でわかること・東大文系数学満点の背景には、血の滲むような演習量があった・とにかく基礎例題を完璧に。・東大数学満点を目指す人は、問答無用[…]
模試の過去問
駿台も河合も若干癖があるのですが、それでもやはり教育効果の高い問題が多く載っています。また、当時の受験生のデータと自分の出来とを比較できるのも大きな魅力の1つです。過去問やり終わったらこれやる事をお勧めします。特に駿台のものはおすすめです。
ハイレベル理系数学
やさしい理系数学と形式は同じですが、あれよりもさらにやさしくない演習書です。これと同レベルの演習書には次に紹介新数学演習があります。
新数学演習
あり得ないほど難しいと言うわけではないですが、かなり難しいです。この辺りまでくると数学オタク感が出てきますが、『新数学演習』を東大理系数学対策として使った東大合格者が少なくないのも事実です笑。
東大対策というよりは医学部対策向けな気もします。少し癖がありますね。
学コン もっと考え抜く数学
これは思考力養成に最適です。学力コンテストの過去問を集めたものですが、入試対策としても十分機能します。難問をとき崩す力を養成したい方におすすめです。多分一般に出回ってる参考書の中で一番難しいです。ただ、いたずらに難しいわけではなく、きちんと教育効果のある良問です。
余裕がある人は東大理系数学対策におすすめです。
まとめ
東大理系数学の特徴で紹介した事を意識しながら、おすすめの参考者を①→②→③の順でこなしていってください!
すぐには結果は見えませんが、確実に力はついていくはずです!
また、数学は得点が不安定な事もあるので過剰な自信を持たず、他の勉強も頑張って下さい!(超重要)
では、合格に向けて勉強に励んで下さい、健闘を祈ります!!