この記事では、大学受験物理の問題集として有名な『名問の森』について解説していきたいと思います。
物理の基本は勉強したから演習をしていきたいけど問題集としてどれを選んだらいいかわからないという方や、今やっている問題集が簡単すぎるから少しレベルアップしたいという方も少なくないのではないでしょうか。
筆者も受験生時代に『名問の森』を使っていました。自信を持ってオススメできる問題集です。そこで、筆者の体験談も交えながら詳しく『名問の森』について解説します。
・理系の現役東大生が執筆
・高校時代は『名問の森』を愛用して現役合格
・東大物理は50/60点という東大の中でも神レベル
『名問の森』の基本情報
実際の入試問題から選ばれた良問が並んでおり、問題の難しさレベルが4段階で示されているため、実践的な演習書として非常に優れており、自分の実力がどの程度か試すにもうってつけです。
全体の難易度としては「なかなか難しい」と感じる方も多いかもしれません。物理の勉強を始めてすぐに『名問の森』に取り掛かるという勉強計画はオススメできませんが、基本問題は余裕だ!と自信を持って言える受験生には是非とも勧めたい問題集です。『名問の森』を繰り返しやれば確実に実力がつきます。
『名問の森』は2冊で構成されており、1冊目は「力学」「熱」「波動Ⅰ」、2冊目は「波動Ⅱ」「電磁気」「原子」の範囲を扱っています。単元ごとにまとめてあるので、自分が苦手な範囲の問題を何回も解くという勉強法にも適しています。
著者プロフ
河合塾物理科講師 主に中部地方を中心に講義を行う。
著書に『物理のエッセンス』・『名問の森』・『浜島清利 物理講義の実況中継』など。
問題数の多さ
134問という数だけを聞くと「え、それほど多くないじゃん」と思う方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、1つ1つの問題が決して軽い問題ばかりではないので、全部の問題に取り組んで解説を読む時間まで考えれば、最初の想定以上に時間がかかるのではないかと思います。
筆者が受験生時代を思い返してみての感想としては、134問という問題数はちょうどいい数にも思われます。
解説の充実度
しかし、あくまでも『名問の森』は実践的な問題集なので基本的な公式までかみ砕いて説明してくれるというわけではありません。『物理のエッセンス』や学校で配布される教科書などで解説されているような基本原理は、すでに頭の中に入っていることがあくまでも前提とされています。
上で述べたように、『名問の森』は基本的な公式や原理を完全に理解してから手に取るようにしましょう。
また、勉強計画的にどうしても時間が許さなくて『名問の森』を早くから始めなくてはならないという人は『エッセンス』などの比較的簡単な参考書を隣において解説を読むとより一層理解できるでしょう。
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『名問の森』のレベルや対象者は?
後ほど詳しく述べますが、さらに難しい物理問題集として『難問題の系統とその解き方』、通称『難系』というものがあります。受験物理におけるラスボス的な存在です。『名問の森』は『難系』と比較すると簡単です。さらに『難系』と比べれば解説もわかりやすいので、『難系』に挑戦する足がかりとして最適です。
物理において基本的な原理を完全に理解しておくことは必要条件ですが、それだけでは十分ではありません。
実際の入試問題を解く際には、基本原理を筋道立てて組み合わせる応用力や誰もが知っている公式をうまく問題に当てはめる対応力が、難しい大学になればなるほど必要となります。そのためには基礎的な参考書だけでは不十分なので、是非とも『名問の森』を活用してください。
また、本書に掲載されている問題は実際に過去出題された入試問題なので、特に現役生の方で入試問題に触れたことがない方は、実際の問題がどのようなのかを見ておく上でも本書は有用だと思います。過去問に取り組む前に肩慣らししておきましょう。
『名問の森』を1周するのにかかる時間は?
本書に掲載されてある問題数は2冊で134問ですので、一日に5問ずつでも取り組めば一ヶ月弱で1周することができます。
物理だけをやり続けるわけにはいかない上に、解説まで読み込む時間を考えれば5問ずつがちょうど良いくらいの時間の使い方かなと筆者は感じていましたが、もっと早く解ける!という方や、物理を集中的に勉強したいという方はもっとたくさん問題を解いて、速いスパンで1周してもよいのではないでしょうか。
また、本書は単元ごとに問題が並んでいるので、たとえば力学が得意という方は力学の範囲に取り組む際には少し多めの問題を解いてみるという方法でもよいかもしれません。
受験生は時間が限られています。そして『名問の森』は「演習書」なので実際の受験の時と同じように問題に取り掛かる練習をすることが大事です。
入試の時には1問に何十分も時間を使えませんよね。時間を決めて問題を解き、時間が来てわからない時は「これが本番でなくてよかった」と考えて潔く解説を読みましょう。2周目の時に解けるようになればそれで十分なんです。
『名問の森』の理想的な学習時期・タイミングは?
ここでは『名問の森』を使うのにオススメな時期を筆者の体験をもとにして解説したいと思います。
勉強の進行具合や他の科目との兼ね合いもあるので実際その通りの時期に取り組むというわけにはいかないかもしれませんが、これから長期的な勉強計画を立てるという受験生の方は是非参考にしてみてください。
『名問の森』をいつから使い始めるべきか
受験において演習問題は貴重です。よくわかっていない状態であまり早くから演習問題を消費してしまうと実力がつかない上に、本当に解く力が身についた後に使える問題が少なくなってしまいます。
筆者は『エッセンス』→『名問の森』という順番で勉強しました。夏休みは学校がある時期とは違い、安定して時間を使えるので演習問題を毎日こつこつと解いていくのに適していると考えていたため、夏休みが始まるときに『名問の森』をスタートしました。
また、夏休みには大手予備校の模試がたくさんありますよね。その時までには基礎は完全に身につけておいた方が良いと思います。
さらに欲を言えば、模試までに少しだけ(たとえば力学の範囲だけなど)は演習問題に慣れておきたいと考える受験生の方も多いのではないでしょうか。
『名問の森』をいつまでに終わらせるべきか
もちろん受験直前期まで『名問の森』にかかりっきりでは難しいかもしれませんが、苦手な単元などは何回も見直して良いと思います。
より難易度の高い問題集や過去問を解きながら、「あ、これに似た問題『名問の森』にあったな」ということも多いと思います。そんな時は、「受験も近いから『名問の森』なんか開いてられない・・・」などと奢らずに、しっかりと復習するようにしましょう。
『名問の森』は何周も使うべき問題集ですが、ここではせっかくなので「いつまでに少なくとも2周しとくべきか」という具体的な時期を筆者がオススメしておきたいと思います。
秋の模試における成績は夏休みの模試よりもさらに受験に直結してきます。現役生と浪人生の差もほぼなくなってくると言えるでしょう。また、受験に対する緊張感も高まってくるので、秋模試である程度の成績を取れるとメンタル的に楽な状態で直前期を迎えることができます。
ですので、秋の模試はしっかりと演習量をこなした状態で挑むというのがベストです。『名問の森』を2周しておけば必要最低限の応用力と対応力は身につきます。
筆者の場合は、夏休みが終わる頃に1周目を終え、その後は『難系』(時期尚早で最初の頃は全然わかりませんでした)の1周目と同時進行的に『名問の森』の2周目に入りました。
電磁気が苦手だったので「電磁気」の単元だけは3周した状態で秋の模試を迎えたと記憶しています。演習問題に慣れておけば、直前期などに過去問を効率よく解いていくこともでき、最終的には時間の短縮にもつながるので、余裕を持って取り組んでください!
『名問の森』の効果的な使い方と勉強法は?
ここでは効果の出やすい『名問の森』の実践的な使い方&勉強法を詳しく解説していきます。
初見の問題に慣れよう
先ほど、『名問の森』は夏休みの模試シーズンの前には始めた方がいいと述べましたが、それはやはり「はじめましての問題」にぶつかることに慣れておいた方が良いからです。
基本的な参考書に収録されてある練習問題と違い、模試や入試の問題は問題文もより長く、構成も複雑です。そのような問題に出会った時にどのように対処していけばいいのかという対応力を自分がどれほど持っているか『名問の森』で試してみるといいでしょう。
本書を使って演習量を増やしていくと対応力は必ず培われます。ですが、まずは初見の問題に慣れるということが必要です。
受験直前期における復習
秋模試も終わり、受験本番が近づくと過去問演習などに本格的に取り組んでいくことになると思います。
その際に間違えた問題や時間がかかった問題などの疑似問題を『名問の森』に探してみてください。必ず見つかるというわけではないかもしれませんが、特に「力学」や「電磁気」といった大きい範囲においては、似通った問題があると思います。
そしてその問題は一度ならず複数回解いているわけですから理解しているわけですよね。その問題を復習し、より難解な過去問などを理解するための助けとしましょう。
自作の模試を解く
これは筆者が友人と使っていた方法なのですが、『名問の森』を使って自分で模試を作るというものです。
たとえば東大物理は形式として大問が3つありますよね。そして東大理科の時間は全体で150分です。化学の方に多く時間をかけたいので物理にかけられる時間は65分程度というのが一般的な時間配分です。
『名問の森』の問題はさすがに東大入試の問題よりは簡単なので、65分よりも短い45分で選んだ3問を解くというのが具体的なやり方です。
毎回する必要はないと思いますが、問題集というのはどうしても最初から始めてしまうので模試までに全範囲が終わらないということもありますよね。
模試前などに「力学」「電磁気」「波動」から1題ずつ選んでテスト方式で勉強すると単元ごとに偏ることがないですし、制限時間を考えながら3問解いていくことで実践的な時間の使い方を練習することができました。
最低でも2周はしよう
『名問の森』は最低でも2周はするようにしましょう。
もちろん不安な人は3周目に突入しても良いと思いますし、筆者のように苦手な範囲だけ繰り返し使うという方法もオススメしますが、全体を通して最低でも2周はしておくようにしましょう。
1周目は力試し的に解いていく人がほとんどだと思いますが、2周目は1周目で間違えた問題も含めて確実に正解する、あるいは7割程度は得点することを目指して実践的に使うと良いと思います。
そうすれば、過去問などを解いている時に『名問の森』で見た擬似問題を思い出すことができ理解がしやすくなります。さらに復習もしやすくなるので、絶対に「少なくとも2周」は『名問の森』を勉強するようにしましょう。
『名問の森』を終えたらどの問題集をやるべき?
『名問の森』をマスターした!という受験者の方が次に挑戦すべくは先ほど述べた『難問題の系統とその解き方』です。
しかし『難系』は、東大・京大受験者で物理を得点源にしたい方はぜひとも取り組むべき問題集ですが、そうでない方や受験が近づいていて時間が許さない方は『25カ年』など志望校の過去問を解いた方が効率的だと思います。
『名問の森』に関してよくある質問
基本的には『名問の森』に関する解説は以上になりますが、以下では本書に関してよくある質問にQ&A形式で回答していきたいと思います。
Q. 『名問の森』だけで東大に受かる?
『名問の森』だけで東大に受かるのかという問題は筆者も受験生時代に考えていました。
ぶっちゃけて言ってしまえば、東大物理の難易度は平均すると「『名問の森』以上『難系』以下」です。そこで、東大入試において物理で高得点を取る必要がない人は『名問の森』の後に『難系』を通らず、すぐ『25カ年』へと移行しても構わないと思います。
逆に物理で高得点(50点以上)を目指す人は『難系』まで勉強しておいた方が確実だと言えます。しかし、『難系』をやったからと言って絶対に高得点が取れるというわけではありません。『名問の森』1周『難系』1周するよりは、『名問の森』を2周した方が点数は伸びます。
合格するために自分が物理で何点取らないといけないのか、どれくらい物理の勉強に時間をかけられるのかを考えながら『難系』に進むかを決めてください。
Q. 『名問の森』だけで京大・阪大は余裕?
筆者は京大・阪大を受けていないので、受験生時代の筆者の友人を参考にして答えさせていただきます。
まず、京大医学部・阪大医学部を目指していた人たちは『難系』も使っていました。
一方で、他の学部を受験する人たちは『名問の森』を主体に繰り返し勉強していた印象が強いです。
過去問のレベルを見て『名問の森』で十分だと思うなら、本書を何回も活用するのも良い勉強法だと思います。
Q. 医学部志望は『名問の森』よりも難しいやつじゃないとダメ?
医学部志望、特に阪大・京大・東大・慶應といったレベルを受験する方たちは、合格ラインに達するために必要な点数が高いので、必然的に物理でも高得点を取る必要があります。
ですので、基本的には『名問の森』以上の問題集に取り組んでおくことをオススメします。
難しい問題に慣れてどんなテストでも高得点を期待できる実力を手に入れておくと安心できると思います。
Q. 『名問の森』をゴミとか言ってる同級生がいたんだけど・・・
もし、周りに『名問の森』はゴミだと言っている人がいるならば、その人は受験に落ちます。
筆者も筆者の友人たちも東大に受かった理系受験生は全員『名問の森』をやっていました。『名問の森』を使わずに、すぐ『難系』を使い出す人もいましたが、結局難しすぎて『名問の森』に戻ってくるという二度手間をしていました。
受験勉強は時間との勝負です。このような二度手間は命取りになりかねないので絶対にやめましょう。
また、『難系』を初めから使って、自慢げにしている人は、「物理がわかった気になっている」だけです。こつこつと地道に勉強することが大切です。
もし周りに『名問の森』をバカにして笑ってくる人がいたとしても、春に笑うのはあなたです。自分の勉強方法に自信を持って最後まで頑張ってください!