このように感じる東大受験生は多いと思います。
筆者もどちらかというと暗記は苦手な方だったので、本格的に受験勉強を始める前は不安でいっぱいでした。
ですが、実は東大地理は正しい対策を行えば安定して得点できる科目です。
今回は東大地理の傾向や対策、おすすめの教材などを詳しくご紹介します。
・東大地理選択の現役東大生が執筆
・東大二次本番の地理では40点オーバー得点
・東大首席など100人以上の東大生に勉強法をインタビュー
東大地理の基本情報
まずはじめに東大地理の基本的な情報をお伝えしていきたいと思います。すぐに読める内容ですので是非最後まで目を通してみてください。
時間
この時間内で世界史・日本史・地理の3科目の中から2科目を選択し、解答する必要があります。
また地理はこの3科目の中では解くのに一番時間がかかる傾向にあるため、選択する場合、時間配分には特に気を配る必要があります。
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出題形式
またそれぞれのパートには3〜5個の小問があり、合計約20問の設問で構成されています。
設問は基本的に60字及び90字の論述問題が中心です。記述の分量が異なるので比較することは難しいですが日本史・世界史に比べて問題数が多く、資料の読み取りにも時間がかかる場合が多いため、素早く正確に問題を処理することが必要になります。
難易度
地理は暗記分野という印象が強いかもしれませんが、東大地理で求められる知識レベルはセンター試験(共通テスト)と同程度です。そのため難しい用語や特殊なテクニックを知っておく必要はありません。
ただしセンター試験(共通テスト)と比較して、記述力や論理的思考力は求められますのでそれを意識した対策を行うことは必要です。その対策も済んでしまえば、あまり苦戦することなく問題が解けるようになるのではないかと思います。むしろいかにミスをせず失点を減らすかが大切になってくるのです。
また過去問を解いた感想としては、年による難易度の差はそれほど無いように思います。もちろん知識が不十分でそれほど問題を解き慣れていない段階では苦手な分野が出題されたりすると点が伸び悩むこともありました。
しかし勉強が進んで問題を解くためのコツをつかめるようになると、年によって点数にばらつきが出ることはあまり起こらなくなりました。
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配点
文系科目の総合得点が440点なので、地理の配点はその2割にも満たないという計算になります。
しかし、文系受験者の多くが苦手とする数学や時間勝負なところのある英語などの科目がある中で、地理は安定した得点を望める重要な科目だと言えます。ですので、ここで可能な限り失点を減らし、確実に点を取ることが必要不可欠です。
合格者平均点
しかし筆者や周りの学生の点数、独自に東大合格者の得点を集計しているサイトなどを参考にすると、大体40点前後が平均点だと予想することができます。
また、東大地理は比較的点が開きにくい科目だと考えられます。そのため合格者の得点は40点前後に固まっていると思われます。
目標点
先ほども述べたように東大地理の難易度はそれほど高いわけではありませんから、まずは基礎をしっかり固めてとるべき問題は必ずとれるように訓練することが必要です。
それができるようになったら問題演習をひたすらこなして安定した点数の獲得を目指しましょう。
東大地理の分野別対策法
ここまで東大地理の基本情報を見てきましたが、ここからは各分野の得点のコツや対策について詳しくお話ししていきます。
地誌
東大地理対策において最も重要なのが、世界の様々な地域についての気候・地形などの自然的要素と人口・歴史・産業などの文化的要素を把握しておくことです。
気候であればケッペンの気候区分、地形であればその成り立ち、など必ず知っておかなければならない知識が少なからず存在します。
そのため、「地理は暗記科目」というイメージはあながち間違いではありません。しかし、単に丸暗記をするのでは記憶が定着しにくくなってしまい、効率が良いとは言えません。したがって、複数の分野を横断するような形で体系的に考えながら学習することをおすすめします。
具体的な例を述べると、気候は緯度や地形によって決定される部分が大きいですし、よく問われる資源問題も地形の成り立ちに大きく関係しています。
さらに文化的要素を見ても、産業の特色は自然環境によってもたらされる場合が多く、ここにも自然的要素と文化的要素との関連性が見て取れます。
また東南アジアなどの旧植民地の産業も頻出ですが、ここでは世界史の知識が役に立ったりします。
このように、地理で問われる様々な事柄には理由や背景がある場合が多いのです。それを念頭に置き、体系的に学習することで、より忘れにくく応用の効きやすい知識を得ることができます。
Point・世界中の地域の自然的要素と文化的要素を把握する
・東大地理は横断的かつ体系的学習がおすすめ
統計
東大地理では統計を重視する傾向が強く、これをいかに正確に読み解けるかが得点のカギになっています。
統計問題を解くためには、知識・論理的思考力・記述力の3つが必要不可欠です。地誌を頭に入れた上で問題の統計と照らし合わせなければ解答できない問題が多くなっています。
また論理的思考力は必要ですが、そこまでひねった問題はあまり出ないためある程度の訓練をしていれば大丈夫だと思われます。しかし反対に言えば多くの受験生が正解できるということになるので、ここで点を落としてしまうと致命傷になりかねません。
そのため、落ち着いて考えれば間違えないような問題では確実に得点できるようにしましょう。
記述力も解答を作る上でとても重要です。地理の制限字数はかなり短めの場合が多く、その中でいかに簡潔に論理の破綻なく文章を書くことができるかが勝負を分けます。
せっかく自分の中では答えが出ているのにそれをうまく伝えられずに失点…ということが起こらないよう、問題演習を始める段階になったら意識的に記述の練習を行うのがおすすめです。
Point・東大地理は統計を重視する
・日頃から回答記述の訓練をしておこう
地形図
地形図の読み取りもよく出る分野です。
筆者は地形図が大の苦手で非常に苦労させられました。地形図の理解にも主に小地形に関する最低限の知識が必須ですが、それだけではなく独特な視覚情報を正確に処理する能力も必要です。
この力をつけるためには実際に問題を解く以外に方法はないように思います。ここ数年で地形図の読み取り問題は減ってきているようですが、いつ出てもおかしくないため過去問やその他の問題集で練習をしておくことが必要です。
いつから対策?
繰り返しになってしまいますが、東大地理を解くために必要な知識はセンター試験(共通テスト)と同レベルです。そのため一次試験の勉強を始めた段階で東大入試の対策も同時に行なっていることになります。
まずは必要な知識を頭に入れることが最優先ですから、センター(共通テスト)過去問や模試で85点くらいがとれるようになるまではそちらに専念して、その後本格的な二次対策に移行するのが良いかと思います。
基本的な知識が抜けている状態で記述問題を解いても、ただ難しく感じるだけであまり役に立ちませんので焦らずに順序立てて対策することが必要です。
時事問題は見るべき?
東大地理は気候問題や社会情勢などの分野で比較的新しい知識を求めてくる場合があります。
それに対応するためには時事問題を頭に入れておく必要がありますが、時事問題に特化した勉強する機会はほとんどないため、日常生活や授業の中で仕入れておく必要があります。
それだけでは不十分では、と不安に思われるかもしれませんが、東大の入試では基本的に重箱の隅をつつくような問題は出題されません。
時事問題についても同様に、毎日新聞の国際面を隅々まで見ている人にしか解けないような問題は出ないのです。例えば東日本大震災やPM2.5のようなニュースで大きく取り上げられ、日常生活を送る中で耳に入ってくるレベルの事柄であることがほとんどであるため、そこまで心配する必要はないと思われます。
結論としては、時事問題に関する特別な対策は必要ありませんが、日頃から問題意識を持っておくことが重要です。
東大地理は独学でいけるか
結論から言うと、独学でいけます。
宅浪経験者である筆者の経験上、地理のような「知識→演習」型の科目は最も自力で対策がしやすい科目です。学習のプロセスが単純明快なため、やる気と時間さえあれば目標点に近付くことは比較的容易だと思います。
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また、高度な記述力や論理的思考力が求められる問題もありますが、そのあたりのコツは後ほどご紹介する参考書や過去問を使った演習で十分身に付けることが可能です。
一つだけ気をつけるとすれば、知識をインプットするだけの期間は少し頑張って短縮するということです。
独学では知識が定着したかどうか・問題を解くための力がついたかどうかということを自分で確認しなくてはなりません。塾や予備校では課題が出たり小テストがあったりして定着度を頻繁に確認することができますが、独学の場合は客観的な判断が難しく、早めに問題演習に進みたいところです。
そうすれば問題を解きながら知識の確認ができますので、少し負荷がかかっても早めに基礎知識を習得できるように心がけることが必要です。
東大地理の対策におすすめな参考書
今までお話ししてきたように、東大地理では基本的な知識・論理的思考力・記述力が必要とされます。ここからはその力をつけるのに最適なおすすめの参考書や教材をご紹介します。
地図帳
こちらは参考書ではありませんが、地理の勉強に必要不可欠な教材です。
高校の地理の授業で用いられる地図帳にはいくつか種類があるようですが、筆者が使っていたのは帝国書院の「詳説高等地図」です。基本的には自分の高校で指定されたものを使えば問題ないかと思われます。
また自分で選ぶのであれば、世界各国の地図が載っているだけでなく、気候区分や人口・産業などの各種統計のデータが豊富に記載されているものを購入してください。
地図帳は知識習得と問題演習どちらの段階でも非常に重宝します。筆者は特に地形と気候の関係、資源や農作物など産業の勉強をするのに地図帳を活用していました。
問題演習をこなす段階になっても、不得意な地域が出た時に復習したりするのに役立ちます。
村瀬先生の参考書
次におすすめしたいのは東進の講師の村瀬先生が書かれた参考書です。バラエティ番組によく出演されているので、見たことのある人は多いかもしれません。
何冊か出されているようですが、受験地理の参考書としては、
『村瀬の地理Bをはじめからていねいに(地誌編 ・系統地理編)』
『村瀬のゼロからわかる地理B(地誌編・系統地理編)』
の2シリーズ4冊があります。
地誌編と系統地理編に分かれており、名前の通り地理初心者にもわかりやすい内容です。
筆者が受験生だった頃には「ゼロからわかる〜」は未出版だったので使ったことがありませんが、「はじめからていねいに」には基礎知識が非常に体系的にまとめられています。初心者にも最適な一方、ある程度基礎が固まっている人にも問題演習に進む前の知識の再確認ができるという点でおすすめです。
また、村瀬先生以外にも山岡先生や河合塾の瀬川先生などが参考書を書かれています。こちらも村瀬先生のものと同様に、必要な知識やポイントが体系的にまとまっているので、書店で見比べて気に入ったものを購入してみても良いかもしれません。
地理B一問一答
こちらは知識のインプットに役立つ教材で、主に一次試験対策用として様々な出版社から出ています。メインの教材としては不十分ですが、記憶を定着させるための副教材として繰り返し使うことをおすすめします。筆者も移動中や寝る前などの短時間に見返していました。
東大地理問題演習
次におすすめしたいのは「東大地理問題演習 (東進ブックス 究極の東大対策シリーズ)」です。
こちらは難易度が高いため、過去問などをある程度解いた上でまだ余力がある人に特に向いています。また、問題数やレパートリーが多く、解説もしっかりしているため目標点+αを目指すのにはもってこいの教材です。
ただし、基礎的な知識が不十分な段階でこちらの教材を使うのはあまりおすすめできません。まずほかの教材で基礎をしっかり固め、過去問演習を何周かした上で使うのが良いでしょう。
過去問
東大地理対策で外すことができないのが、「東大の地理25カ年(難関校過去問シリーズ)」です。
こちらは何周かする受験生が多く、実際に筆者も3、4周しています。
この問題集の使い方として個人的におすすめなのは2、3年分を直前用に残しておいて本番と同じように解いてみるというものです。同じ問題を何周もしていると慣れてしまうので、何年か分は本番前の最後の腕試し的な解き方をしてみてもいいのではないかと思います。
過去問なので当然ですが難易度は本番と同じですので、先ほどご紹介した「「東大地理問題演習」よりも解きやすくなっています。
40点前後を狙うのであればこの過去問を何周かするのが一番効果的だと思いますので、無理して他の教材に手を出さずこれ一冊をメインでこなしていくのも戦略の一つだと思います。
まとめ
長くなりましたが東大地理の対策において重要なことをまとめると、
・東大地理の問題はそこまで難しい知識を要求しない
・基礎的な知識は丸暗記よりも体系的に習得する方が効果的
・基礎が固まってきたら問題演習をひたすらこなす
の3つになります。
これを念頭に置いて勉強を進めれば、たとえ独学であっても合格に必要な点数をとることが可能です。
上で紹介した教材であれば、村瀬先生→過去問○周(→問題演習)の順番でつかってみてください。
最後になりますが、東大入試では基本的な知識が身についているか・問題を素早く正確に処理することができるかということを試される傾向が強いです。ですので、それに合わせた適切な対策を行うことで結果は必ずついてきます。
地理はその代表のような科目ですので、是非今回の記事でお伝えした対策方法を参考にして勉強していただければと思います。