東大世界史は600字を超える大論述もあり、制限時間もシビアなので一筋縄にはいきません。
今回は、東大に独学で合格した筆者が東大世界史の対策法について徹底解説します!実際に受験し合格したからこそわかる東大世界史を攻略する方法を伝授していきたいと思います。
・東京大学の現役生が執筆
・世界史以外も独学で東大に現役合格
・東大首席など100人以上の東大生に勉強法をインタビュー
東大世界史の入試情報
まずは東大世界史の基本情報についてまとめていきます。
東大世界史は入試二日目の最初の科目であり、ほかの科目(日本史or地理)と合わせて行われます。
問題構成
第1問は大論述で、毎年450~600字程度の、時代を超えたあるテーマに関する問題が出題されています。
第2問は80字程度の小論述問題が6~7問出題されます。これも幅広い地域や時代から出題されます。
第3問は一問一答問題が10問出題されます(一行記述問題が出ることも)。これも幅広い分野、時代から出題され、現代史や文化史からも出題されます。
時間
ですので、世界史にかけられる時間はおよそ75分ほどだと考えてください。
ここで多くの受験生は時間配分に悩むと思います。実際、時間配分はめちゃめちゃ重要です。
実際にこのような配分でやっている人が多いです。ですが、時間配分に関しては人それぞれの得意不得意によって変わってくるので、実際に解いてみて自分で調整してみるといいでしょう。
難易度
しかし、ただの暗記ではなく、時代の特徴や本質をとらえた、しっかり考えさせられる問題が出題されます。
世界史は暗記科目だと思い込み、ただ単に知識を蓄積するだけでは東大世界史は絶対に攻略できません。東大世界史用の記述対策をしっかりして臨みましょう。
配点
大問ごとの配点についてですが、東大から発表されたことがありません。
さまざまな有名予備校でもいろんな議論が巻き起こっていて、正解は出ていません。
また、大問1の大論述の全体的な出来によって配点が変化しているという説もあります。ですので、配点が公表されていない以上はどこかの大問に特化するのではなく、満遍なく対策していく必要があります。
目標点
日本史や地理に比べて差がつきにくいです。そのため、高得点を取って差をつけるのが難しい一方で、失敗するとかなり差をつけられてしまうということになります。
点数分布ですが、ほとんどの合格者が35~45点の中にいます。
合格するためには全科目の合計点を最大化する必要があるため、たとえば世界史が得意な人が、完璧にしようと55点以上を狙っても、その時間をもっと差のつきやすい英語や数学に割いたほうが絶対にいいです。
東大世界史の傾向と分析
ここからは東大世界史の傾向と分析について、実際に受験した筆者だからこそわかることを書いていきたいと思います。
東大世界史は全地域、時代から満遍なく出題される!
入試世界史と言えば、近世や近代、中世などの出題が多く古代や近現代が少ないという傾向があります。
確かに、中世や近世には今日の世界を形作る歴史上重要な出来事が多くあった時代であり、当然のことと言えます。
しかし、東大世界史では古代や近現代からも満遍なく出題されるのが特徴です。ここで、大問1の大論述の近年のテーマをまとめてみました。
2020年 | 「15世紀頃から19世紀末まで、東アジアの国際関係のあり方と近代におけるその変容」 |
2019年 | 「18世紀半ばから1920年代までのオスマン帝国の解体過程」 |
2018年 | 「19世紀から20世紀に活躍した女性の活動と、女性参政権獲得の歩みや女性解放運動」 |
2017年 | 「ローマおよび黄河・長江流域で『古代帝国』が成立するまでの社会変化」 |
2016年 | 「1970年代後半から1980年代の東アジア、中東、中米・南米の政治状況の変化」 |
2015年 | 「『モンゴル時代』の日本列島からヨーロッパに至る広域で見られた経済的・文化的交流」 |
2014年 | 「19世紀ロシアの対外政策がもたらしたユーラシア各地の変化」 |
2013年 | 「17世紀から19世紀までのカリブ海・北アメリカ両地域における開発、人の移動とそれにともなう軋轢」 |
2012年 | 「アジア・アフリカにおける植民地独立の過程とその後の動向」 |
2011年 | 「13世紀までにアラブ・イスラーム文化圏をめぐって生じた動き」 |
これらを見て分かる通り東アジアからヨーロッパ、東南アジア、アメリカ大陸まで様々な地域から出題されており、さらには古代から近現代まで時代設定も幅広いです。
特に2017年には受験生が手薄になりがちな古代から、2016年にはこちらも対策の難しい現代から出題されています。
したがって、東大受験生は古代から現代まで、アフリカやラテンアメリカなど受験においてマイナーな地域のことについてもカバーする必要があります。しかも、ただ知識をつけるだけでなく記述問題として説明できるくらいまで理解しなければなりません。
とはいえ、他大学と同様中世や近世など、歴史上重要な出来事からの出題が多いのも事実です。
東大世界史はとにかく時間が足りない
論述とはただ単に単語を羅列して知識を披露するのではありません。与えられたテーマに沿って構成を考え、自分の歴史理解度を設問者に提示しなければならないのです。そのため、かなり時間がかかります。
筆者は薄めの論述対策本で練習したり、用語集である用語をそれを頭の中で説明する(おすすめ)という勉強法を行っていました。このように、東大世界史を攻略するために、インプットだけでなく速くて正確なアウトプットも練習しておきましょう。
東大世界史で問われる知識は教科書レベル
ここまでの記事をを見て、
と不安を感じている人も多いでしょう。
しかし安心してください。東大世界史の知識レベルは教科書レベルです。
また、記述問題も教科書に書かれていることがほとんどです(たまに教科書レベルを超えた理解が問われることもある)。
筆者も教科書を何度も何度も読みこみ、ラインマーカーを引きまくって文章をそのまま丸暗記していました。
そうすれば教科書レベルの知識が完璧になるのはもちろんのこと、記述にその文章が丸々使えるので超おすすめです。
東大世界史の基本的な勉強法
上でも勉強法について言及してきましたが、ここでは東大世界史を攻略するために基本的な勉強法を体系的にまとめて解説していきたいと思います。
東大世界史は教科書ベースで勉強するべし!
東大世界史といえばとりあえず教科書です!教科書は暗記するくらい読みこんでください!
東大世界史を攻略するためには、教科書が最強の参考書なのです。
理由はいくつかあります。
教科書が最強な理由①
どの問題もすべて教科書レベルから出題されます。ですので、教科書を完璧にしてしまえば東大世界史の知識をすべてカバーできてしまうのです。
教科書が最強な理由②
教科書は文章で歴史がつづられていますから、文章をそのまま記述に使えるという利点があるのです。
文章をそのまま使うことによって、微妙なニュアンスに違いによる減点はなくなり、ほぼ完璧に近い解答を書き上げることができます。
それもそのはずです。教科書は東大の教授含め、日本中の多くの研究者監修のもとで作られていますから、いっさいの誤解が生まれないように一言一句丁寧に作られているのです。
したがって、教科書はそこら辺の胡散臭い参考書よりも100倍信頼できる東大世界史のバイブルなのです。
教科書が最強な理由③
教科書は時代ごとに歴史を区切って、そのうえで地域ごとに分かりやすいように記述されています。
したがって、歴史の全体の流れを分かりやすくインプットすることができます。
では具体的にどのように教科書を使うのでしょうか。筆者の実体験や周りの東大生に聞いた教科書の最強の使い方を説明していきます。
東大合格者がやってる教科書の読み方
まず、教科書をチャプターごとに読みこみます。
かといっても一回読んだだけでは完璧に理解することなど不可能なので、まずは太線部分のみに注目して「こんな出来事があったのか~」くらいのテンションで読んでいきましょう。それから数回読んでいけば大体の概要が分かるはずです。
概要が分かってきたらまとめノートを作ってみましょう。
太線部分を中心に自分の教科書の言葉を使ったり自分の言葉に落とし込んだりして用語を理解していきましょう。
学生で、結局まとめノートって無駄なの? 管理人今日は「まとめノート無駄論争」に終止符を打ちますよ 結論から言うと、まとめノートはきちんと使用すれば決して無駄では[…]
また、教科書にマーキングしたりするのもすごく大切です。
筆者はもうめちゃくちゃになるくらいマーカー引っ張ってました(笑)。そうすれば単語も歴史の流れも完ぺきに理解することができます。
教科書を十分に読みこんだら資料集も活用しましょう。
視覚的資料を用いることで理解度は飛躍的に上がります。自分は資料集を広げながら教科書を読み、重要なところはノートにまとめるという勉強法をしていました。
これが基本的な勉強法になります。これができたうえで問題集や用語集に取り組むといいでしょう。
東大世界史は用語集で単語理解を深める
用語集はかなり便利な参考書です。というのも、分量の関係上、教科書では用語の説明が十分ではない箇所があります。
そこで、もっと詳しく知りたいと思った用語を用語集で検索してその説明を読むとかなり理解を深められる場合があります。
また用語の説明が詳しくできるようになると、大問2の小論述にかなり強くなります。
筆者も教科書と資料集を基本として勉強しつつ、難しい概念や教科書の説明が足りない箇所は用語集を使って確認していました。
この作業が本番での得点アップにつながったと思います。受験生の皆さんもぜひ活用してみてください。
東大世界史はアウトプットを大切に
歴史の勉強において、インプットばかりやっていてアウトプットを疎かにする受験生がしばしば見られます。
しかし、アウトプットもインプットと同じくらい重要なのです。特に東大世界史では、いかに上手くアウトプットするか、が得点に直結してきます。
アウトプットのやり方はさまざまです。たとえば、学校で配られるプリントの空欄部分を赤字で埋め、赤シートで隠してみたり、穴埋め問題集をやったり、友達と問題を出し合ったりなどいろいろあります。用語集を使うやり方もあります。
自分に合ったやり方を見つけて効率よくアウトプットの練習をしてみてください。
東大世界史の大問別対策法
次に大問別の対策法について書いていきたいと思います。
第1問大論述の対策法
東大世界史の最も大きな特徴と言えるのが大問1の大論述です。
東大の大論述では、あるテーマについて450~600字程度の論述問題が出されます。毎年、この大論述の出来が点数に大きく直結すると言っても過言ではありません。
ではどのように対策すればよいのでしょうか。
大論述は小論述の組み合わせ
いくら東大受験といえど、限られた制限時間の中で数百字のひとまとまりの文章を書くのは不可能です。
大切なのは、3-4行の小論述を組み合わせて全体として大論述が完成しているという考え方です。はじめから5~600字の文章を言書こうとしても、何から書いていいかわからず、また字数の調整も難しくなります。
教科書の表現をそのまま使う
上述した通り、教科書の文章はとても精緻に作られています。
言葉の微妙なニュアンスで減点されないよう、覚えているところはすべて教科書の表現を使って書きましょう。
極度の緊張下、どうせ一言一句そのまま使えることはないのでコピペの恐れは気にしなくても大丈夫です。
添削を受ける
大論述を書いたは良いものの、その後どう採点したらよいかわからないという人も多いと思います。
そんなときは必ず添削してもらいましょう。
添削してもらうのは塾の先生でも学校の世界史の先生でも構いません。できるだけ添削してもらいましょう。自分の答案のくせや悪い点は自分ではわからないものです。
塾や学校の先生は長年世界史に携わり、いろいろな生徒を見てきていると思います。そのため、適切なアドバイスがもらえ、よりよい答案が書けるようになります。
筆者も学校の先生に15年分ほど添削してもらい、だいぶすっきりした文章がすらすら書けるようになりました。とてもおすすめなので、特別な理由がない限り絶対に添削してもらいましょう。
東大に受かる人と落ちる人の違いの1つに、添削指導を受けてきたかどうかというのがある。 東進のデータによると、添削指導を受けた人とそうでない人で合格率が20%も違うことが分かっている。しかし、 […]
第2問小論述の対策法
続いて第二問の小論述の対策法についてです。大論述ほど癖はないですが、かなり重要になってきます。
基本的な世界史論述問題集をやる
小論述は世界史の定番的な論述問題が出されることが多いです。一部かなりひねった問題も出題されますが、オーソドックスな問題は満点をとるくらいでやらないと合格点は厳しくなってきてしまいます。
そこで、テーマ別の世界史論述問題集を一冊やるのをお勧めします。
そのような参考書をやれば、オーソドックスな問題に対してほぼ考えることなく対応できるし、第一問の大論述でも応用することができます。
用語集を使う
これは、筆者が独自にやっていた勉強法ですが、かなりおすすめです。
小論述では「~という制度について説明せよ」といった、理解が難しい語句に関する説明論述が出題されます。こういった問題は論述問題集ではなかなかカバーできません。
そこで、理解の難しい用語について、用語集の説明を丸暗記するといった勉強法をやっていました。もちろん、膨大な量の単語についてやっていたら時間がいくらあっても足らないので、頻出かつ難しい概念の単語だけでいいです。
また、マイナーな問題については、単に細かい知識が問われているだけだと思ってください。つまり、知っているかどうかです。
教科書をしっかり読み込みかみ砕いて理解していればなんとか書けるものばかりなので、やはり教科書精読が大切になってきます。
第3問一問一答の対策法
第3問の一問一答の対策法についてですが、前提として教科書・資料集レベルの知識量が必要です。ただし、難関私立のような難しい用語まではカバーする必要はありません。
対策法についてですが、一問一答をやるかどうかというのがカギになってくると思います。
筆者の意見としては、一問一答をやるのは、大方反対です。というのも、文字通り問題に対して答えを思い浮かべてまた次に行くといった典型的な一問一答勉強法だと、第1問や第2問に必要な論述力、説明力が全くつきません。ただ単に単語を覚えるために一問一答を使うのは絶対にやめた方がいいです。
ではどうすればいいのか。
論述がメインの東大世界史において、ただ単に単語だけ答えるのは本当に時間の無駄なので、、常に文章と結びつけられるような勉強をしていきましょう。
東大世界史対策におすすめの参考書たち
ここからは、東大世界史を攻略するためのおすすめ参考書を紹介したいと思います。
教科書
この記事で散々言っているように、教科書が最強の参考書です。
基本は学校で配られるやつで大丈夫ですが、それぞれ特徴があるので、自分に合ったものを買うのもいいかもしれません。
山川
定番中の定番ですね。言わずと知れた大人気の教科書になります。
この教科書の長所は、ちょうどいい難易度の単語が過不足並べられていて、かつ癖のない文章で書かれているところです。世界史教科書のテンプレートといえるもので、東大世界史にも十分対応できます。
さらに、山川の良い所は補助教材が充実しているところです。この教科書に沿って作られた穴埋め集や問題集が数多く出版されているため、勉強のしやすさはトップレベルです。
東京書籍
こちらの教科書は筆者が実際に使っていた教科書です。
特徴は、難易度としては山川と変わらない(やや高い?)ですが、入試でもそのまま使えるほど文章がしっかりしている論述向けの教科書であるという点です。
また、東大をはじめ東京近郊の大学の教授が編集しているため、特に東大入試にはもってこいの教科書になっています。
東大受験に関して言えば、筆者は東京書籍が最強だと思っています。完成度の高い文章と過不足のない単語量、分かりやすい編成、どれをとっても完璧と言っていいでしょう。筆者の一番のおすすめの教科書です。
荒巻の見取り図
これはかの有名な荒巻先生による通史の参考書です。
教科書ではわかりづらい所や歴史の流れが丁寧に分かりやすく書かれていて非常におすすめです。
この参考書のいい点は、とにかくわかりやすいということです。文字やイラストを使って、歴史の背景知識や前後関係をしっかり説明してくれています。
世界史リブレット
これは山川出版社から出版されているもので、あるテーマについて詳しく説明が書かれている参考書です。
特徴は、各分野の専門家が執筆しているため、かなり詳しくかつ正確な背景知識、歴史の流れを学ぶことができるという点です。
ただ、たくさん出版されていて全部読んでいてはキャパオーバーになってしまうと思うので、自分が苦手な分野or頻出分野(中世ヨーロッパなど)についての巻を買って読んでみるのが現実的な使い方でしょう。
そのトピックについてはかなり詳しくなれるので、論述で差をつけることにもつながります。
一問一答
大問3の対策のところで述べたように、私は一問一答を使いすぎるのはあまりよくないと思っています。
ただ、そんな中でもおすすめの一問一答は山川の一問一答です。理由は簡単、単語が教科書レベルだからです。
ほかにも東進やZ会も一問一答を出版していますが、これらは難関私立向けの超難単語も登場します。早慶などを併願する方はいいかもしれませんが、あくまでも東大受験を考えるならばあまりお勧めしません。
世界史論述問題集−45か条の論題
これは論述の問題集としておすすめです。
難易度はかなり高いですが、重要なテーマに絞って問題演習ができ、質の高い解説もついています。筆者も論述問題集として使っていました。
背景知識なども扱えるので類題にも対応できてかなりおすすめです。
過去問
世界史の過去問については一般的に赤本と青本がありますが、おすすめなのは駿台の青本です。
こっちのほうが解説がしっかりしているため、過去問演習をやりつつも様々な知識を蓄えることができます。赤本でもよいですが、出来れば青本を買うのがベターでしょう。
おまけ:東大世界史でよくある質問
東大世界史に関する解説は基本的には以上です。ここでは、コラムとして東大文系受験生からよく質問のある
いつから東大世界史の勉強すればいい?
東大入試でいえば、最も重要なのは英語と数学で、世界史は後回しにしてもいいでしょう。
筆者は地方公立校出身で、論述を始めたのはなんと高3の12月でした。それでも、センター後に集中してやったおかげで間に合ったので、まずは数学と英語を優先して余裕があったら早く始めるのが良いでしょう。
東大世界史は教科書だけで十分?
教科書ではカバーしきれない背景知識も入れることが重要になってきます。
しかし、何度も言っているように教科書を中心に勉強するのが最も効果的です。
教科書は2冊持っておいたほうがいい?
東大世界史は現代の対策しなくてもいい?
東大において、特に第一問の大論述で現代史は頻出になってきています。戦後しか範囲ではないときもあるくらいです。
もし現代史を捨てていたら、致命的な失点につながりかねません。かならず古代から現代までしっかり勉強しましょう。
東大世界史は文化史捨ててもいい?
論述のテーマになることもあり、なおかつ第三問の一問一答で出題されます。
文化史は、その時代を象徴するものであったりと、意外と歴史を語るうえで無視できない存在となります。時代を理解するという観点からも文化史をしっかり学びましょう。
年号は覚えなくていいの?
というのも、問題設定で~世紀における・・・など必ず時代設定がなされます。つまり、その時代から外れたものを書いてしまったら減点になるわけです。
世界史の横のつながりを理解するのにも年号は必須なので、語呂合わせなどを使ってしっかりと覚えてください。