世界史という科目はやり方を間違えなければものすごい勢いで伸びる教科です。
今回は共通テストの世界史で9割以上取れる勉強法について解説していきます。
共通テスト世界史の基本情報
共通テスト世界史の勉強法を解説する前に、基本情報から確認していきましょう。
まず、共通テストの世界史で最も重要なことは「世界史Aと世界史Bの二種類がある」ということです。
本番の試験の時に、解いている科目があっているかどうかを必ず確認しましょうね!
難易度
共通テスト世界史で出題される内容は教科書レベルのものばかりです。
単語を覚えるだけでなく、どうしてその出来事が起きたのか、その内容、それによって何が起こったのかを理解しましょう。
また、国語力を問われる問題もあるため(下で紹介する1月16日世界史B第1問Bなど)注意が必要です。
時間
ふつうに時間が余るので入念に見直しをすることができます。
時間が余っても絶対に寝ることはしないで、ケアレスミスがないか何度も確認しましょう。
問題
共通テストにはどんな問題が出るのか気になる方がいるかもしれません。
そこで過去問から1題引っ張ってきたので皆さんにご紹介します。
【2021年度共通テスト世界史B第1問A 問2】
『史記』は正史(正統なものと公認された紀伝体の歴史書)の祖とされるものの、そこに記された内容が、全て紛れもない事実だったとは限らない。司馬遷の時代、始皇帝の死をめぐっては幾つかの逸話が存在し、彼はその中の一つを「史実」として選択したのである。正史編纂の多くが国家事業だったのに対し、『史記』はあくまで司馬遷個人が記した書物であり、したがって素材となる資料の収集は司馬遷が独自に行ったもので、収集の範囲にはおのずと限界があった。下線部の背景として、司馬遷の時には長年の戦乱に加えて、思想統制によって多くの記録が失われていたことも挙げられる。世界史上の思想統制について述べた文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①始皇帝は、民間の書物を医薬・占い・農業関係のものも含めて焼き捨てるように命じた。
②エフェソス公会議で教皇の至上権が再確認され、禁書目録を定めて異端弾圧が強化された。
③ナチス体制下では、ゲシュタポにより国民生活が厳しく統制され、言論の自由が奪われた
④冷戦下のイギリスで、共産主義者を排除する運動が、マッカーシーによって盛んになった。
簡単に解説しておくと、
①始皇帝が焚書・坑儒を行ったのは有名な出来事だと思います。反射で正解にしたくなってしまいますが、ここで重要なのは「医薬・占い・農業」という点です。山川の詳説世界史BのP71に、
『史記』によれば、医薬・占い・農業関係以外の書物をすべて焼き(焚書)…
と記載があります。よって①は誤りとわかります。
②ここでは公会議の名前と内容が一致しているかどうかが肝になります。エフェソス公会議は異端を決めた会議ですよね。「神・イエス・精霊が同質のものである」という三位一体説のアタナシウス派を正当とし、「神の性質を持つイエスと人の性質を持つイエスを分離する」ネストリウス派を異端とした会議でした。
では、教皇の至上権が再確認され、禁書目録が作られた会議はなんでしょうか?
そう、トリエント公会議です。ルターを代表する人々によって行われた「宗教改革」に対抗し、カトリック勢力によって起こされた「反抗宗教改革」の一環の出来事ですね。もちろん②も誤りです。
③これはわざわざ説明する必要もないほどに有名ですよね。ゲーリングが設立したゲシュタポ(後にヒムラーの親衛隊、SSに統合)によって言論の自由は奪われました。
④マッカーシーの赤狩り(レッド・パージ)はアメリカで行われた出来事です。よって④は誤りです。
このように、共通テスト世界史の問題は至ってシンプルで標準的ですので、下でお伝えする勉強法を忠実に守れさえすれば誰でも9割近く正答することができます。
範囲
平均点
共通テスト世界史の平均点は以下のようになっています。
1月16日 | 平均点 |
世界史A | 46.14 |
世界史B | 63.49 |
1月30日 | 平均点 |
世界史A | 43.07 |
世界史B | 54.72 |
共通テスト世界史の傾向や出やすい分野
昨年度から始まった試験のため傾向を分析することは難しいですが、マイナーすぎる所はあまり問われない印象を受けます。
世界史の教科書を完璧にすることが高得点への近道だと思います。
共通テスト世界史対策におすすめの勉強法
まず、世界史を勉強する上で一番大切なことは「通史の流れをタテヨコの視点で理解できているか」です。
世界史は全体像、概観を掴むことで理解を深めることができる科目です。概観を掴むには繰り返し学習することで知識を確固たるものにしていく以外方法はありません。
ここでは、世界史の勉強法のポイントを地域・年代順に解説していきます。
ヨーロッパ
ヨーロッパは古代(ギリシア・ローマ)、中世(封建制の時代)、近世(大航海時代・ルネサンス・宗教改革・主権国家の成立の時代)、近代(市民革命・帝国主義の時代・冷戦)、現代にわけることができます。
古代
ギリシア・ローマで重要なポイントは「どのようにして政治や社会が変わっていったのか」です。
ギリシアの政治は王政⇒貴族政⇒民主政と変わっていき、ローマの政治は王政(エトルリア人)⇒共和政⇒元首政(プリンキパトゥス)⇒専制君主政(ドミナトゥス)と変わっていきます。(ポリビオスの政体循環史観から)
安定⇒不安定⇒変化⇒安定⇒不安定⇒変化…といった風に変わっていく感じですね。
この「王政」や「共和政」の時に起こった出来事も確かに重要で絶対に覚えるべきなのですが、共通テスト世界史を受ける上では矢印の部分を疎かにしない事がとても大切です。例えば、共和政から元首政に変わる前後の時代は「内乱の一世紀」と呼ばれ、政治闘争や社会の変化が起きていましたよね。
中世
375年に起きたゲルマン人の大移動によって西ヨーロッパ社会には大きな変動が起きました。西ローマ帝国という一つの大きな国家が滅び、複数の小、中規模の国家が表れ始めます。
みなさんがヨーロッパの地図を覚えていないとしましょう。その状態で「西ゴート王国はイベリア半島、ブルグンド王国はガリア東南部、ヴァンダル王国は北アフリカ、フランク王国はガリア北部にあります」と言われてわかりますか?
しかし、地図を覚えていれば、
といった感じで整理することができます。
共通テスト世界史では地図問題も出題されるので、資料集等を見ながらおおよその地理関係を把握しておきましょう。
近世
この時代で重要なポイントは「外交」ですね。近世はヨーロッパの国同士の戦争が多発します。
何が目的の戦争なのか(覇権争いなのか・宗教戦争なのか・継承問題なのか・領土争いなのか)、誰が敵で誰が味方なのか(味方がいつも味方とは限らない)、結果どうなったのか、を戦争ごとに整理していきましょう。
共通テスト世界史ではそういった理解を問う問題が出題されます。
近代
ウィーン体制では正統主義と自由主義、第一次世界大戦では協商国と同盟国、第二次世界大戦では民主主義と全体主義、冷戦では資本主義と共産主義、といった感じですね。
どのようにして国をまとめていったのか(イタリア・ドイツ)、政体はどのように変わっていったのか(フランス)、経済政策はどのようなものなのか(イギリス)なども把握しましょう。
現代
教科書を読むことも大事ですが、情報量は多いとは言えないと思います。
アメリカ
大統領の名前と事業をセットで覚えれば流れをつかむことができます。
他の地域に比べると簡単なので気楽に行きましょう。
ラテンアメリカ
この地域の歴史は「植民地化以前」と「植民地時代」、「独立とその後」に分けることができるでしょう。
植民地化以前
地図を見ながら文明が位置する場所を把握しましょう。地図に関しては勉強しているうちに自然と覚えられるので大丈夫ですが、それぞれの文明の特徴が混ざらないように注意が必要です。
マヤ文明はユカタン半島、アステカ文明はメキシコ高原、インカ文明はアンデス高原
植民地時代
大航海時代からラテンアメリカはヨーロッパ諸国の植民地になっていきますよね。
ブラジル(ポルトガル)やメキシコ(スペイン)といったい大きな植民地だけでなく、ハイチ(フランス)やドミニカ(スペイン)といった諸島部も覚えておきましょう。
独立とその後
1804年にハイチが独立した後、他の植民地も追随していきました。
独立運動の指導者や独立に干渉した勢力と支援した勢力などを確認しましょう。
また、戦後のラテンアメリカ世界の勢力関係も重要です。(軍事独裁政権と左翼勢力)
オセアニア
この植民地は植民地化以降の歴史が主な内容ですね。
ニューカレドニア島・タヒチ島⇒フランス
その次にオーストラリアの白豪主義やハワイ王国の話などを把握しておけば共通テスト世界史対策は大丈夫です。
アジア
アジアは「中国、朝鮮などの東アジア」、「インドやパキスタンなどの南アジア」、「遊牧民族の内陸アジア」、「東南アジア(タイ・カンボジアなどの大陸部とフィリピン・マレーシアなどの諸島部)」、「イランやトルコなどの西アジア」にわけることができます。
東アジア
この地域は中国メインですね。
各王朝ごとに勉強する際に、漢民族と遊牧民の関係を押さえておきましょう。
中国と比べると影が薄めですが、共通テスト世界史でしっかりと出題されますのでしっかり覚えましょう。
内陸アジア
遊牧民祭りです。
移動する民族ですので、国という概念が薄いんですよね…。
中央アジアのだいたいの地形を覚えて、何世紀あたりに栄えたのかを掴んでおけばわかりやすくなると思います。
南アジア
古代からの伝統であるヴァルナ制やジャーティは非常に強い影響力を持っています。
また、インドの植民地時代を見てみると、イギリスは地域によって徴税方法を変えています。(ザミンダーリー制とライヤットワーリー制)
宗教の違いによってインドとパキスタンは別の国として独立しているのも重要です。
東南アジア
地図が把握できたら、次は各国の歴史(古代史や植民地時代など)を確認していきましょう。
西アジア
イスラーム化以前はオリエント世界(シュメール人、ヒッタイト、アケメネス朝などなど)の歴史ですね。この範囲は教科書だと初めの方にありますよね。
イスラーム化以降は王朝がたくさんあって大変ですが、メイン(超強い)とサブ(まぁまぁ)でカテゴリ分けするとわかりやすくなると思います。
アフリカ
アフリカは国の位置把握と植民地の宗主国の把握が重要ですね。共通テストで問われる可能性が十分にあるでしょう。
大航海時代以降は西洋諸国による黒人奴隷貿易、1885年のベルリン会議以降はアフリカ分割、1951年以降にリビアが、1960年に17の国が独立(アフリカの年)していきます。
文化史
名前だけだとまず覚えづらいですし、その知識はまったく役に立ちません。(受験に使って終わりの知識)
ソフィストとは何なのか、諸子百家はどんなことを説いたのか、デカルトの「われおもう、ゆえにわれあり」とはなんなのか、弁証法とはなにか、構造主義とはなにか、文学は社会にどのような影響を与えたのか、歴史学の歴史、などを確認し知識に厚みをつけましょう。
共通テスト世界史対策におすすめの参考書・問題集
以前書いたこちらの記事にまとまっています!
学生共通テスト世界史におすすめの参考書・問題集って何? 管理人現役東大生が教えてくれるよ 「共通テストの世界史、センター試験の世界史と全然違う…」「どんな参考書[…]
共通テスト世界に関してよくある質問
共通テストの世界史に関しては基本的に以上となります。
ここでは最後に共通テスト世界史に関してよくある質問にQ&A形式で回答していきます。
共通テスト世界史はいつから対策始めればいい?
英語がどのくらいできるかによって変わってくると思います。英語は大学受験において最も重要な教科ですので英語が苦手ならまず英語を集中的に勉強し、サブ教科として世界史などの暗記科目に取り掛かるべきです。
世界史や日本史といった科目はやればやるほど点数があがる科目ですので、こつこつ覚えていきましょう。
勉強はがむしゃらにやればいいというものではないです。どうすれば覚えられるのかを考え、頭を使って勉強しましょう。
共通テスト世界史対策にセンター試験の過去問使うのは効果的?
全然アリだと思います。というかむしろ推奨します。
共通テストの過去問はほとんどないので、本番直前まで取って置き、センター試験の過去問で知識の確認をする方法がおすすめです。
共通テスト世界史の時間配分はどうすればいい?
世界史の大問は全部で5つあるので各10分、見直しに10分というような感じで行けばいいと思います。
ただ、人によって解くスピードが違うのであくまで目安として参考にしてください。