こんにちは。僕は慶應義塾大学で一年間仮面浪人した後に東大文科二類に合格することができた者です。
今回は僕の個人的な東大仮面浪人の経験について書かせていただきます。
ただし、以下は僕の個人的な経験に基づく個人的な意見です。あまり鵜呑みにせず、「東大にこんな奴がいるのか」程度に聞いていただければと思います。
また、学習方法といった人によって適切なものが違う部分より、仮面浪人において多くの人が共有すべきと考えている思考法や精神的な側面を中心に語ります。
長くなりますが、この文章が少しでも多くの読者の助けになれば幸いです。
・慶應から東大文二への仮面浪人に成功した東大生が執筆
・東大首席をはじめとした100人近くの東大生の調査経験のある管理人が監修
東大仮面浪人のいろは
東大仮面浪人の失敗しないためのコツを書く前に、まずは基本事項から確認していきます。
・全受験生における仮面浪人の割合
・仮面浪人の成功率
・理系の仮面浪人について
・2浪目以降の仮面浪人について
そもそも仮面浪人とは
仮面浪人の自分なりの定義は、「第一志望の大学をあきらめきれず、受かった大学に通い授業やサークル、バイトにいそしみつつ、再受験を目指す」というものかと思います。
このように聞くと、「大学の授業とかバイトとかしつつ受かるなんてすごい」とか、「大学なんて楽しいことがたくさんあるのによく勉強したね」とか言われます。実際は、そんなことありません。反論が三点あります。
一点目は、先に述べたように「受験は運」だということです。
僕の現役時の模試の判定はBで、1年目は6点足りずに不合格でした。周りの高校同期は、A判定でセンターが850点を超えて落ちた人もいれば、ずっとE判定でセンターも良くなかったのに受かった人もいました。
また、現役時代、僕は英語が苦手だったので、仮面浪人時代は必死に勉強を続けました。その結果、英語の二次試験の点数は20点上がりました。しかし、それ以上に数学や国語の点数が上がり、それが合格の決め手でした。
その時の出来不出来、年による問題の難易度など、受験において「運」の要素はどうしても大きくなります。もしも読者の皆さんは模試の結果が良くても落ちてしまったケースに当てはまるのであれば、「今年は運が悪かったから、また来年挑戦しよう」と考えても良いかもしれません。
大学に通いつつ合格できたのも、運によるところが大きいかもしれません。したがって全く威張れません。
二点目は、仮面浪人より現役で受かる方がはるかに素晴らしいということです。
当たり前ですが、仮面浪人ということは一度落ちてその悔しさを経験しています。今振り返るとそれも人生の大きな糧になりましたが、代わりに自己肯定感が弱くなります。
もちろん人によるでしょうが、そのコンプレックスというのは人生において長く続くかもしれません。特に仮面浪人するほどその大学にこだわりのある人はなおさらでしょう。
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仮面浪人は、受験一年目に限れば所詮負け犬なのです。受かるのであれば、現役で受かった方がはるかに良いに決まっていますから、まずは現役で受かることを最優先に考えるべきでしょう。
万が一落ちた時になって初めて、大学に通うという保険を掛けたうえで再受験するか、あるいは予備校に通いすべてを再受験に捧げるかを考えると良いと思います。
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三点目は、仮面浪人をするのはよほど第一志望の大学に未練がある、言い換えれば現時点で通っている大学のことをよく思っていない、ということです。
東大に限った話をすれば、東大じゃなきゃダメだと感じているからこそ大学に通いつつ、誘惑に負けずに勉強を続けられるのです。
ですから、大学での授業やサークル、バイトは楽しいものであったけれども、自分の中の悔しさやコンプレックスが邪魔をして、自分はそれらを素直に楽しめなかったのです。
とても個人的な話で恐縮ですが、勉強以外取り柄のない自分にとって、受験さえ失敗してしまうようでは自分に存在価値など無いと感じており、慶應では満足できなかったのです。
慶應も十分に素晴らしいところなのですが、教師が東大を目指せとうるさく、優秀な生徒が東大を目指し私立文型を馬鹿にするような風潮のある進学校という環境下では、そのような認識を得ることができませんでした。
しがない公立高校ですらこのような風潮があるのに、ましてや東大に多数が合格し、大学に合格してなおもさんざんFランを馬鹿にしている(残念ながら東大にはこのような生徒が数多く存在する)多くの私立進学校の生徒にとっては、私立にいるということはもはやタヒ刑宣告といっても過言ではない圧力や焦りを感じることでしょう。
そのようなみじめな想いが僕らを仮面浪人に導いているので、大学に通いながらの受験は格段につらいとは個人的には感じていなかったですし、このように感じている仮面浪人生も多いのではないかと邪推します。
以上の反論から分かるように、自分にとって仮面浪人は特段すごいものでもなく、むしろ一年目落ちたという恥ずべき過去であると考えています。他の方はこのようなコンプレックス丸出しの回答ではないはずですが、このように仮面浪人を考えている人も多少は存在するのではないでしょうか。
全受験生における割合
きちんと統計を取ったわけでもありませんから実感ベースですが、仮面浪人で合格する受験生は全体の1~2%は存在するのではないかと思います。
自分が所属したドイツ語クラスは自分含め陰キャや変人の多い特殊な環境下でしたが、僕を含め二人存在しました。また、新歓では様々なサークルを巡りましたが、合計4名の仮面浪人成功者に会うことができました。
高校同期でも、仮面浪人を決断した人を4名知っています。受験生に占める実際の割合はわかりませんが、ある程度仲間は存在するようです。
しかし、仮面浪人を決断する際は、周りがやっているからではなく、自分が本当にあきらめきれないからという理由で決めた方が良いと思います。
仮面浪人の成功率
もちろんこれもきちんと統計を取ったわけでもありませんから実感ベースですが、高校同期の状況や人づてに伺った話から推測すると、7割程度は成功していると考えます。
ただし、何度も述べたように受験は運の要素が大きいので合格するかどうかは受けてみないと分からないです。
そして、自分がどれほど合格したいという意思をもって勉強を重ねられたかが、合格確率を高めるうえで不可欠であると思います。
理系の仮面浪人について
自分は理系ではないので分かりませんが、↓こちらの記事↓に理系で東大仮面浪人が成功した人の情報が載っています。
何かあれば 一浪? はい、一浪です どこで仮面? 関西の私立とだけ 特定はされたくないので 俺も仮面予定で…
一般的なことを述べると、暗記科目や現役時代に勉強が追い付きにくい科目は浪人生が有利になるでしょう。
生物や化学といった暗記分野や、現役時代に最後まで十分に学習する時間がなかった科目が自分の落ちた原因であるならば、仮面浪人の期間中にそれらを丁寧に学習することで、合格可能性が高まるでしょう。
また、文系との対比を考えると、文系は大学での授業が比較的楽で時間を確保しやすく、また試験においても日本史世界史といった暗記科目の比重が大きく、これが原因で受験に失敗した人は多いので、そういった観点からは文系の方が仮面浪人は有利だといえるでしょう。
しかし、結局はその人の苦手科目次第だと思います。
二浪目の仮面浪人の是非について
自分は一浪目だったのですが、クラスのもう一人の仮面浪人生は二浪目に仮面浪人を行っていました。そのような人も多くはないとその人はおっしゃっていました。
ただし、就活を終えた現在感じることは、二浪目の人と会う機会はほとんどなかったということです。
単純に僕がたまたま会うことができなかったのか、あるいはエントリーシートの段階である程度はじかれていたのかはわかりませんが、二浪自体に抵抗感を覚える企業の面接官は多いのかもしれません。
東大仮面浪人で失敗しないためのコツ
まず根底にあるべきなのは、受験は運の要素が強いので、二回目はたまたま合格できるかもしれないというチャレンジ精神です。
ただし、ある程度模試で良い偏差値をとるなど、合格圏内の学力があることは必須の前提条件です。そのうえで、少しでも合格確率を上げるコツや考え方についてお話します。
コツ①:東大に合格したいという強い意志を持つこと
まずは精神面について考えます。
そもそも、なぜ東大でなければだめなのかを明確にすることが重要です。この気持ちがなければ、今の大学で新しい目標に向けて頑張ろうとか、今いる大学で遊んだり飲んだりやったりしようなどといった気持ちになり、苦手科目の学習や学力維持のための学習に集中できません。
「絶対に東大でなくてはだめだ」という強い心がモチベーションを生み、学力を高める第一段階になると思います。ただし、強い心と書きましたが、動機は何でも結構だと思います。
僕自身は生来スポーツもダメ、コミュニケーション能力もダメ、芸術性もダメ、おまけに身体的なコンプレックス付きという悲惨な状況で、勉強が人以上にできなかったら生きている価値がないと考え、勉強に励んでいました。
親の要求で慶應に一度進学しましたが、こんな陰キャじゃ慶應ではやっていけないと考え、一刻も早くこの状況から抜け出したいと強く願い勉強を続けました。
このようなネガティブな動機でも、勉強を続ける、誘惑に負けないという強い気持ちを生み出すものであれば何でも良いのです。
東大で自分が勉強したいものがある、東大に行ったあいつに負けたくない、単に人から称賛されたい、高校同期に顔向けできる学歴が欲しい、等々。どんな思いであれ、それが勉強への活力になれば、問題がないと思います。
一点注意したいのは、冷静に考えれば東大でしかやれないこと、東大に入らないとできないこと、というのはごく一部(自分が思い当たるのは財務省や警察庁の学閥、JAXAなどの研究機関程度)であり、実際のところ社会での仕事を人生の最終目標に据えるなら、多くの人にとって学歴は重要でないということです。
むしろ、多くの東大生が行きたいと思う企業では、一定程度の学歴以上であれば、大学に入ってからの努力や経歴こそ重視されると感じています。
そのように考えてしまうと、仮面浪人してまで行きたいというモチベーションは、結局のところ多くは東大に受かったという名誉や周囲のプレッシャーといったものになるでしょう。
この感情が望ましいものなのかはわかりませんが、開き直って自分は名誉や地位が欲しいのだと考えられると、楽だと思います。
コツ②:自分で苦手を克服しようと、改善点を考え尽くすこと
次に、実際の勉強におけるコツについてお話します。
勉強するモチベーションさえあれば、あとは時間を捻出して勉強し、学力を高めるだけです。
しかし、実際には仮面浪人では他にやることが数多くあるので時間の確保に苦労します。また、予備校に通っていない人が多く自学自習で学力を高める必要があります。
したがって、仮面浪人は一般的な浪人生と比べ効率的に学習するということが求められていると思います。
効率的な自習の仕方は人によって合う・合わないがあり、一介の大学生より信頼できる予備校の講師や他の方の意見を参考にすべきなのでここでは深く触れません。
個人的な意見を端的に述べると、自分で解けなかった原因を探り、次にどのようにすれば解けるようになるのかを熟考することが自習では大事です。
現役時代、多くの学生は学校や予備校の解説を聞き、重点を理解していくという受け身の姿勢でしたが、それだけでは次に解けるかどうかにつながりにくくなってしまいます。
「傍線部のここに着目し、このフレーズからこの文章を見て、対比を意識しつつこう書いてあるからこれが回答に含まれないといけない」など、ストーリー立てて解説できるように、自分で深く問題を考えると、次も解けるようになり、結果点数が上がったと経験しています。
東大仮面浪人で気をつけておきたい注意点
東大仮面浪人に関して多くの受験生が疑問に思ったり、検索ニーズが高かったりすることを最後に書いておきます。
願書周りについて
浪人生だからと関係なく、指示通りやればよいと思います。特筆することはありません。
合格後の諸手続き(退学等)
大学の学務課に行き、仮面浪人の旨を伝え、退学証や諸手続きに関する書を指示通りに書けば完了です。
大学によると思うので、学務課の指示をしっかりと聞きましょう。
個人的なアドバイスですが、学生証は記念に写メっておくとよいと思います。今となっては良い思い出です。
単位の引き継ぎ
自分はしていません。できるかも不明です。
文系であれば、引き継いでも引き継がなくてもよほどのことがなければ留年しませんし、負担も特に変わらないと思います。
重要なのは記憶の引継ぎで、前の大学で語学などの基礎科目をある程度真面目に勉強していれば、東大でも好成績が取れると思います。
仮面浪人に成功して新しい大学に移った場合、前の大学で取得した単位を引き継ぐことはできるのでしょうか?仮面浪人経験者の私が…
おわりに〜これから仮面浪人を考えている人へ〜
再三になりますが、今回一番伝えたかったことは、「受験は運」、「東大に行きたいという意思が大事」の二点です。
ここまで駄文を読んでしまったあなたが、少しでも仮面浪人について理解を深め、人生の選択の糧にして頂くことが、筆者の至上の喜びです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。