東大受験は多くの科目を並行して勉強しなければなりませんが、その中でもどのように勉強すれば良いか受験生が最も悩むのはやはり東大現代文ではないでしょうか。
僕自身も受験生の頃、最も悩んでいたのが東大地理と、この東大現代文でした。
しかしコンスタントに対策を重ねることで、本番は大きな失敗をすることなく無事終えることができました。
そこで、本記事では僕自身の試行錯誤の経験をもとに、東大現代文に向けてどのような対策をしていけばよいのかを解説していきたいと思います。
・2016年度の東大首席合格者が執筆
・東大2次国語の点数は84点
・東大理3首席をはじめとした100人以上の東大生に勉強法をインタビュー
東大現代文の基本情報
まず東大現代文の基本的な情報をまとめてみます。まず「敵を知る」ことです。
東大現代文の構成
東大の国語は大問四つ(理系は三つ)からなり、そのうち二つは古典に属します。残りの二つ(理系は一つ)が現代文にあたります。
大問1と大問4が現代文になっていて、大問2と3を挟む格好になっています。
学生「東大古文で点数を稼がなきゃいけない」「東大古文はどの参考書を使えばいいの?」 といった事情や悩みをもつ東大受験生が多いです。 難易度の高い現代文で点数が期待できない分[…]
東大現代文の配点
理系は各大問につき20点で、現代文には20点分の配点があるとされています。
文系は国語の中に占める現代文の割合が1/2に対し、理系はその割合が1/3なので、文系は現代文の力がより重視されていることが分かりますね。
「東大は理系でも2次試験で国語が課されるらしいけど、東大理系国語がいまいちどんな試験なのか知らない…」「そもそも国語って他の科目に比べてどう勉強すれば良いのか全然分からない…」と悩んでいる方はいませんか? 今回は、[…]
東大現代文の傾向
僕個人の感想を言うと、文系にだけ課されるこのふわっとした文章が本当に苦手で、最後までどう攻略したらよいのかわかりませんでした。ただ、大問1の方は毎回似たようなパターンの問題しか出ないので、慣れれば少しずつ攻略していくことができます。
一方、各設問の傾向はどうかというと、「~とあるが、どういうことか説明せよ」、「~とあるが、これはなぜか」といったシンプルなものがほとんどです。
大問1にだけ、最終問題として、「文章全体を踏まえたうえで○○字以内で答えよ」という字数制限付きの要約問題っぽいのが出ます。福神漬けみたいな漢字問題も出ますが、あれはまあ、どうでもいいです。
東大現代文の難易度
とはいえ、完全に個人の感想になりますが、大問1にもたまにエッセイのような論理展開のはっきりしない文章が出ることもあり、そういう年は難しいです。
大問4は毎年よくわからないです。毎年難しいです。まとめると、「大問1は普通、ただたまに難しくなる。大問4は毎年難しい。」という感じです。
学生「東大ってどれくらいの難易度なの?」「東大入試は難易度高そうだからやめとこうかな…」「実は基礎問ばかりって聞いたけど嘘だよね?」 こういった疑問や悩みを持つ方は多い。 […]
東大現代文の出典
知りたい人もいると思うので一応過去の東大現代文の出典を載せておきます。
2017年第1問 | 伊藤徹『芸術家たちの精神史』ナカニシヤ出版 |
2017年第4問 | 幸田文『藤』新潮文庫 |
2016年第1問 | 内田樹『反知性主義者たちの肖像』晶文社 |
2016年第1問 | 堀江敏幸『青空の中和のあとで』光村図書出版 |
2015年第1問 | 池上哲司『傍にあること 老いと介護の倫理学』筑摩選書 |
2015年第4問 | 藤原新也『ある風来猫の短い生涯について』 |
2014年第1問 | 藤山直樹『落語の国の精神分析』みすず書房 |
2014年第4問 | 蜂飼耳『馬の歯』 |
2013年第1問 | 湯浅博雄『ランボーの詩の翻訳について』 |
2013年第4問 | 前田英樹『深さ、記号』 |
東大現代文のシンプルな対策法
現代文といっても、結局は「日本語の文章を読んで、読んだままを記述」すればいいだけの科目です。ただ、この「読んだままを記述」というのが意外に難しいです。
僕は出題される文章を読んで、「結局何が言いたいのかわからなかったな」となることはほとんどなかったように思います。ただ「~はどういうことか」と聞かれたときに、なんとなく記述すべき内容はイメージできるのですが、文章全体の流れがある中で、どこからどこまでを切り取って説明すべきなのか、また説明する範囲をどれくらいの粒度で説明すればよいのか、ということにずっと悩んでいました。
東大現代文は「2行以内で述べよ」というような指定が多く、露骨な字数制限は課されませんが、それでもかなり簡潔な記述が要求されていることは明らかです。的を絞りつつ、必要な情報をしっかり盛り込んだ解答を作成する必要があります。
以上を踏まえたときに、具体的にどのような対策を行えば良いかを考えると、とにかく問題演習を積み、そうした記述の「勘」を身に着けることが重要だということがわかります。とはいえ、ただ闇雲に問題演習を積んだところで記述力が付くわけではないので、はっきりと目的意識を持って臨む必要があります。
「河野玄斗の勉強法が知りたいけど本は買いたくない…」「河野玄斗の勉強法を簡単に説明してほしい」という中高生は意外に多い。 そこで今回は、現役東大生の筆者が、河野玄斗さんの勉強法の効果や真似するメリット・デメリット等[…]
それはまず、「どうすれば過不足なく情報を解答に盛り込めるか」という意識です。先述のように、問題文の意味がわからないということはほとんどありません。現代文の難しさは、読んだ内容を筆者の問題意識と絡めながら、いかに簡潔な記述に落とし込むかという点にあります。
よって、ピントをぼかさずに、かつ情報を削りすぎずに解答を仕上げるという意識が日頃の演習においても重要になります。この目的意識を自然に養わせてくれる問題集も後に紹介します。
一方で東大現代文では、「~とあるがどういうことか」といった文章の局所的な理解を問う問題だけでなく、大問1の最終問題のような文章全体の趣旨を要約するような問題も出題されます。
この文章全体の理解を問う問題に対応できるようになるためには、問題文を読んでいる中で、「各段落が文章全体においてどのような役割を果たしているのか」を意識できるようになる必要があります。この意識を養うための、最も直接的なアプローチは要約練習を行うことです。
問題集を解いたりする中で、毎回勝手に200字要約問題を出題されたと仮定して、問題文の要約をすることで各段落の役割を把握する姿勢が身に付きます。ただ、これは結構時間がかかる作業なので、僕は実際に文字に起こさずに、自分の脳内で要約っぽいものが出来上がったら終わりにする、という流れでやっていました。
勉強法についての悩みに、多くの受験生を合格へと導いてきた各教科の先生が、大学受験突破のためにアドバイス。駿台予備学校の現…
東大現代文のおすすめ参考書
ここでは、現代文の記述力を向上させる上で、個人的に非常にお世話になった2冊の問題集を紹介します。他にも使った問題集や参考書はいくつかあるのですが、本当の意味で役に立ったと感じられるのはこの二冊でした。
もちろん、僕も全ての参考書に手を付けたわけではないので、良さそうだと思った参考書にはどんどん手を出してみていいと思います。
得点奪取現代文
僕が受験生時代に最もお世話になった問題集がこの「得点奪取現代文」です。
この得点奪取シリーズは古文、漢文バージョンのものもあるのですが、そのどれもに、いわゆる「河合塾的な」解答方式が徹底されています。河合塾はなぜか塾全体としてポイント式の採点方式を採用しており、その結果として模範解答も減点を防ぐような「守り」の解答が多いです。
余談ですが、駿台は逆に「全体の趣旨が正しければ満点」という趣旨型の採点方式を採用しています。ですので模範解答も、独自の言葉選びで溢れた「攻め」の解答が多いです。東大模試は、河合塾の東大オープンと駿台の東大実戦が二大巨頭としてありますが、同じ解答を提出しても、その得点がそれぞれの模試で全然違うということがあります。
では、肝心の本番の二次試験の採点方式はど知らに近いかというと、これは完全にブラックボックスになっているのでわかりません。結局は自分の信じる解答を仕上げるしかないということです。
ともかく、記述問題でツボを押さえた解答を瞬時に作れる言語センスを持たなかった僕は、とにかく減点を防ぐこの本の解答姿勢が肌に合うと感じました。実際に問題を解いて、模範解答を確認すればわかりますが、本当に文章に書いてあることをそのまま記述に書き起こしたような解答例が多いので、真似しやすいです。同時に自分が書き洩らしていた情報をはっきりポイントとして指摘してくれるので、解答の改善の方向性もはっきりと見えます。
さらにこの問題集の良い点は、別冊の解説が非常に詳しく、丁寧であることです。別冊の解説は問題文を段落ごとに分けて、それぞれ筆者がどのような意図で書いているのか、また文章全体でどのような役割を占めているのかなどが詳しく解説されています。この解説を読むだけで、「文章全体の趣旨を捉える」という意識を養うこともできます。
非常に良質な問題集だったので、一周して終わらせるのはもったいないと思い、解き終わってしばらくしてからもう一周解き直しました。
ライジング現代文
ライジング現代文は駿台の現代文講師の方が書かれている本で、いわゆる「駿台式」の解答方式が徹底されています。
この問題集は先ほど紹介した「得点奪取現代文」で模範解答とされているような解答を「代表的な誤答例」として真っ向から否定し、文章全体の趣旨を踏まえたうえで「攻め」の解答を仕上げてきます。
東大現代文はこのように講師や塾ごとに流派が違うので、全ての人から満点をもらえる解答を仕上げるのが難しいです。ゆえにこそ、数学や理科の満点がいても国語の満点というのは現れないのでしょう。
現代文に苦手意識のあった僕は、最終的にこの「攻め」の解答を提出する勇気が出せず、最終的には得点奪取現代文のような解答方式を選択したのですが、それでもこの問題集は一読の価値があると思います。
というのも、この問題集の解説において目を見張る指摘があって、それは、東大現代文の設問は一つ一つ独立した設問ではなく、その解答をつなぎ合わせることで一つの要約が完成するような美しい構造をしているというものです。数学の問題では(1)、(2)が(3)への誘導になっていることがあり、そうした大問全体の構造というのは比較的把握しやすかったのですが、現代文にもそのような構造が見出されるということは全く考えが及びませんでした。
そうした構造から逆算して、ポイント型の「守り」の解答を一段階上のレベルに練り上げる過程が鮮やかに解説されており、非常に勉強になりました。同時に、自分が本番でそれを真似するのは難しいとも感じました。
東大現代文過去問の使い方
前節で、自分が使った問題集の中で大いに参考になったものを紹介したのですが、僕はかなり早くから過去問演習の形式で対策していることが多かったです。
同じ過去問の話をすると、センター国語の方も個人的にはかなり課題を感じていたので、高2の頃から始めていました。解答方式こそ違いますが、センター国語は東大現代文の対策にも生きるので、ある意味ではこれもおすすめの問題集といえます。センター国語は選択式ですが、際どい選択肢が多くあって、良問(?)揃いです。
脱線はこれくらいにしておいて、東大現代文の過去問の使い方について解説します。
といっても別に特別なことはなく、25ヵ年を順に全て解いていくだけです。本番を意識して時間を測りながら解いてもいいかもしれませんが、僕はそういうことはせずに問題集に近いような方法で使いました。
使用時期についてですが、僕は高3の秋頃に始めて、毎日2題くらい解いていました。その理由は、センター試験の2ヶ月前からはセンター対策に集中したかったので、それよりも前に終わらせるようにしたかったからです。可能ならもっと早くてもいいと思います。
まとめ
この記事では東大現代文の対策法について解説しました。
現代文は僕が受験生時代に最も苦手としていた科目の一つなので、あまり参考にはならないかもしれません。
しかし、試行錯誤を重ねながら演習を重ねていけば、少しずつ記述の「勘」が身についていく感覚はありました。
そのためには、一にも二にも演習量を積むことが大切です。良質な市販の問題集もありますので、是非そうしたものを有効活用しながらコンスタントに取り組んでいただければと思います。