2021年、英語の民間試験利用の取り止めや、記述問題の出題中止などの紆余曲折を経て、ついに始まった共通テスト。
実際に試験が行われたあとも、様々な言説が飛び交っています。情報に翻弄され、結局対策があやふやになっている人も多いはず。
そこで今回は悩める学生のために、貴重な共通テスト一年目を受験した現役東大生が、共通テスト物理で安定して9割得点する対策法を紹介します!
・理系東大生ライターが執筆
・共通テスト物理は満点だった
・東大首席など100人以上の東大生にインタビュー
共通テスト物理の基本情報
共通テスト物理は全問マーク式であり、回答の形式はセンター試験と全く同じです。しかしながら、内容面で過去に類を見ない試験となっています。
実際に、2021年度の問題は、センター試験とははっきり差別化された共通テスト特有の試験内容でした。
共通テストを受験する皆さんは、最初に共通テストの性質を理解することから始めましょう。そうすることで、これからどこを目標に勉強するべきかが見えてきます。
この、「思考力、判断力、表現力」というのが、今までの試験と一線を画しています。
思考力、判断力、表現力が新しく求められるには理由があります。端的に言うと、それは、「今までセンターで図ってきた能力は機械が代行するし、そもそも大学で扱う学問や現実社会の問題はまだ明確な答えない、自ら探求すべき問題だから」です。
ご存知の通り、進化し続けるAIの技術は人間の職業の一部を代替してきています。もはや答えがある問題しか解けない人材は淘汰される時代がすぐそこまで来ているのです。
さらに、大学での勉強というのは、すでに答えがある学びが中心ではありません。むしろ、自ら新しい問題を設定し、学問的な手法で研究することが大学生の勉強なのです。
以上のことを考慮すると、教科書の知識と作業の手早さだけで攻略できるセンター試験は、大学入学の合否を判断する試験として、時代遅れと言わざるを得ません。
まとめると、大学入学共通テストは「知識」に加えて、「思考力、判断力、表現力」が問われる、新たな時代のテストなのです。
難易度
というのも、かつてのセンター試験は先程述べたとおり、
②試験の形式、時間配分への慣れ
で安定して得点できる試験でした。
しかし、それだけでは共通テストで高得点は取れません。
出題範囲
しかし、教科書に載っていないような初見の問題も出題されることが予想されるので、問題演習を積み重ねて物理法則等の基本事項を正確に理解し、問題文を的確に把握してその場で対応できる力、図やグラフをもとに考察する力を身につけておく必要があります。
大問数
今後も同様に大問4つの形式であると考えられます。
センター試験に比べ、法則を用いて計算して結論を得る問題が減少し、物理概念や現象への基礎的理解を問う問題が大幅に増加しました。
日常的に経験される現象を物理的に考察する問題も見られました。
配点
時間
2021年度の共通テスト物理の大問は4つでしたね。
60分の内、マークの確認、難問の見直しの時間を10分とすると、一つの大問に取り組める時間は約12分になります。
そこでもし大問一つに平均5つの問いがあるとすると、問い一つあたり3分以上かけてはいけない計算になります。
共通テストの試行調査と本番から分かる物理の特徴&傾向
それでは次に、共通テスト物理の特徴&傾向を述べていきます。
実験や日常の現象から問題が作られる
この手の問題は中堅以下の大学の二次試験には出にくく、目新しい問題が多いです。特にグラフの読み取りは、難関大学でも出題がほとんどないですから、共通テスト独自と言っていいでしょう。
皆さん試験場で解く問題の中にも、類題を解いたことのないような問題があるはずです。
なぜなら、この手の問題はきまって、見た目では複雑に見えるけど、問題文をよく読み、教科書の基本定理を使えばすぐに解ける問題が多いからです。
基本的に実験や日常生活の現象を取り上げる問題は、問題文が長く、グラフや図があることがほとんどです。こういう問題は、文章を読むスピードはもちろん、必要な情報を抜き出す抽出力が問われます。よって、何が問われているのか把握し、情報を整理するだけで体力が要ります。
よってこの手の問題ではまず、問題文を丁寧に読むことから始めてほしいです。
定性的な判断を迫る問題が作られる
実際に2021年の共通テストでは、選択肢が「大きい」か「小さい」、または「多くなる」か「変化しない」か「少なくなる」で構成される問題がいくつかありました。
これらの問題は、選択肢が数式でないので、一見計算なしで解けるように思えますが、それは落とし穴です。この手の問題は、立式をせずに曖昧な感覚で選ぶと間違えることが多いです。
おそらく出題する側は、受験生が主体的に問題を把握して、論理的な解決に持っていくことを望んでいるのだと思います。
選択肢が数式だと、受験者はそれを見て自然と立式しますが、共通テストでは受験者に数式が必要かどうか自分で判断させたいのでしょう。
この2つが、共通テストを独特の試験にしている要因と言えます。
共通テストは高校物理の本質を問い、論理的思考を求める試験です。
裏を返せば、基本的で極めて良質な試験なので、(特に難関大学の)二次試験の対策をそれなりにしていれば、ガッチリ「共通テストの勉強」をする必要はありません。
それよりは、二次試験の勉強を先にある程度終わらせて、共通テストの実践演習を積んでいくのがベストです。
物理は習熟するのに比較的時間がかからない教科です。二次試験を受ける人は、共通テスト物理に時間を割きすぎることなく、合格点を目指しましょう!
【余談】物理とはどういう科目か?
共通テスト物理を受験する方のほとんどは二次試験でも物理を受験する方でしょう。
そこで、共通テストに必要な能力を示しつつ、総じて物理とはどのような教科かお話します。
物理という教科の特徴を一言で言い表すと、
と言えます。
この「ゴリゴリ数式を用いて」というのは理科4科目の中でも物理の特徴でしょう。古典物理の創始者ニュートンが微積分の生みの親であることから分かるように、物理は身の周りの自然現象を憶測に頼らず、実験則、数式で解き明かそうという試みから始まったのです。
もちろん、高校物理でも常に数式を中心に議論していくことになります。定性的(数式に頼らず)に判断して解ける問題は数多いですが、その判断の根底には数式表現された基本定理への理解がないと、どうしても曖昧さが残ってしまいます。
ここから言えることは、物理の問題を数式を介さず、根拠の薄い感覚を持って解くことは、実力の養成に全く繋がらないということです。
まとめると、物理では「問題設定から言えることを数式で表現する力」が求められています。これは数学で求められている力と同じです。ゆえに、数学の成績と物理の成績はある程度相関があるのです。
では、物理と数学の違いは何かというと、
ということに尽きると思います。
物理は数学に比べ、圧倒的に暗記事項が少ないです。そのため、問題がどの分野に属するか把握すると、自然と解法も限られてくるのです。
例えば、個別試験の力学の大問でエネルギー保存則と運動量保存則を使わないことは、ほとんどありません。力学の中でも、2つの物体の相互作用を議論する二体問題だとほぼ間違いなく運動量保存則を使います。
要は、数学のように最初の方針が定まらないことが少ないのです。
よって、「このような状況だと、この法則が使える」という定石みたいなものをストックしていけば、おのずとその問題が解答者に何を問いたいか見抜けるようになり、物理が得意教科になるはずです。
共通テスト物理で安定して9割得点するための対策法
以下では本題である「共通テストの物理で安定して9割得点するための勉強法」をお伝えします。
現段階での点数に関係なく、共通テストの物理で得点できるようになりたい学生は必見です。
公式を数式的に解釈して理解する
共通テストで物理を得点源にするくらい伸ばすなら、日頃から公式を数式的に解釈して理解する習慣をつけておきましょう。
物理の公式は、ただの数式の羅列ではなく、自然現象をモデル化した言葉です。
運動方程式とは天才物理学者ニュートンが見出した古典物理最大の発見です。物体の質量、加速度(一秒あたりの速度の変化の大きさ)、物体に加わる力の間に美しい関係が成り立っています。
ここで皆さんは、この式を初めて見たとき、どうやって記憶するでしょうか。
間違っても、丸暗記してはいけません。詳しくは後ほどお話しますが、共通テストは公式の根本の理解を問うので、公式の意味や適応範囲をわかっておかなければいけません。
物理ができる人は、こう考えます。
このように自分の中で公式を解釈、咀嚼すると、数式の意味が自然と飲み込めます。
さらに、こういうことを考えていると、答えの検算もできるようにもなります。どういうことかと言うと、物理の解は一般解なので、数式の言っていることが日常の現象と合致するかで、解の整合性が分かるのです。
具体的に例を挙げましょう。
ここで衝突後の玉2の速さを計算しましょう。
答えが2m/(m+M)×vになったとします。
ここで物理が得意な人はこう検算します。
ちなみにこの検算は、その汎用性の割にあまり知られていないので、身につけると周囲より処理速度が早くなり、有利だと思います。
模試や過去問の設問を分析する
共通テストで物理を得点源にするための対策法として次に挙げられるのは、模試や過去問の設問を分析するということです。
模試、過去問の問題を解いた後に、答え合わせだけして何もしないのは問題を解いた時間をドブに捨てているようなものです。必ず、その問題から得られることはすべて吸収してから次の問題を解くようにしましょう。
具体的には、
②「この問題は、なぜ模範解答のように解けるのか」
③「この問題から何が学べるのか」
を考える練習をしましょう。
こうすることで、
ⅱ問題文を合理的に言い換える力
がつきます。
私の場合はさらに上記の①〜③を一文に凝縮し、問題のタイトルとしてストックしていました。
それを理系科目すべてで一年継続していました。物理の参考書はすべて売ってしまったので、数学の参考書に書き込んだストックをお見せします。
問題を解いてからしばらくしてこのタイトルを一読すると、自分が陥りやすい間違いや、物理の問題の本質的な見方が一瞬で思い出せます。
なので、ストックしたタイトルを試験直前に見直すと、過去と同じ間違いをする可能性は格段に低くなると思います。
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共通テストは数十万人が受験する試験であり、高校までの学習の習熟度を公正に見るテストです。一問一問に「きみは高校の勉強でこれが出来るようになったのかね?」という出題者の明確な意図があります。
ですから、問題を解いた後は、結局この問題はどの法則、公式を問いたかったのだろう、と考える癖を付けてみてください。
本番の戦略を練る
共通テストの物理で高得点を叩き出すための対策法として最後に挙げられるのは、本番の戦略を練るということです。
百聞は一見に如かずなので、実際に私の東大物理の戦略の一部を見てみましょう(共通テスト物理の戦略は残っていませんでした)。
これを今の皆さんの戦略と比べてみてください。
私は(雑ではありますが)
・ケアレスミスを防ぐための注意事項
・設問の分析
を考えていました。
これらのことは、ネットの記事でもまとめてありますが、自分で納得して戦略を立てるのと、そうでないのとでは大きな違いがあると思います。
「なぜ自分はその戦略でいくのか」を明確にして試験の戦略を組み立ててみてください。
共通テスト物理対策におすすめの書籍
こちらの記事にまとめています↓
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共通テスト物理に関してよくある質問
共通テストの物理に関する解説は基本的には以上です。
以下ではコラム的な感じでQ&A形式で共通テスト物理に関してよくある質問にお答えして行きます。
Q. 物理は化学・生物より簡単?
この質問の意図を考えると、皆さんの多くが気にしているのは「どの教科を選択すると得点が最大化できるのか」ということではないでしょうか?
私の答えはこうです。
ⅱ.大学で学びを深めたい分野
があるなら、それを取るべきです。
想像してみてください。
点数が取りやすい、という噂を聞いて取ったけど、面白くない上に点が取れないという状況を。
どの教科でも、勉強する中で苦しい時期があります。そのときに、「この勉強は自分でしたいと思って選んだんだ」と目的意識を持てるかどうかは非常に重要です。
加えて、共通テストほど良質なテストで、同じ理科の教科間で難易度にあからさまな差が出ることはほとんどありません。
皆さんはぜひ、試験直前までモチベーションが保てるような教科を選択してください。
Q. 共通テスト物理は原子も必須の範囲として含まれる?
共通テスト物理は原子分野の設問がほぼ間違いなく必答問題として出題されます。
原子分野の設問は物理の他の分野と違って、ある程度教科書が理解できたら、ワンパターンで解けるようにできています。
その「理解」が難しいのですが、何が起こっているか正確に把握できれば、原子に難問はありません。
共通テスト物理ではセンターの時みたいに裏技とかある?
「物理的に正しい過程を踏まなくても、正答にたどり着ける解法」を裏ワザと定義するなら、そのような裏ワザは残念ながらありません。
確かに物理には、「そんなに早く解けるの!?」という別解が登場するのは事実ですが、それらは必ず物理的な過程を踏んでいます。
具体的には、2体の衝突後の速度をベクトル図で素早く求める方法が挙げられます。(普通は運動量保存則と跳ね返り定数の式を連立して解く。)
このような「物理的に正しい別解を積み重ねる」ことは現象を深く理解し、解法の手数を増やすという意味で重要です。
皆さんには物理的に正しい過程を踏む練習をして欲しいので、このような別解をたくさん使えるようにすることをオススメします。
共通テスト物理や生物で得点調整はある?
まず、得点調整とは、選択教科・科目間で問題の難易差による有利・不利が生じないように、平均点を基準にその差を調整することです。
以下は河合塾の得点調整についての記述を引用しました。
『大学入学共通テストでは「地歴B」「公民」「理科②」の同一教科内の科目間(受験者数が1万人以上の科目に限る)の平均点の開きが20点以上となり、それが試験問題の難易度によるものと認められる場合、得点調整が行われます。
得点調整は、上記科目間の最高平均点科目と最低平均点科目との平均点差が15点になるように調整されます。平均点がその間にある科目についても、「平均点差の比率」に応じて調整が行われます。ただし、原則0点は0点、100点は100点のままとなります。』
つまり物理が、化学、生物、地学より断然難しい場合は、試験の公正さを保つため、得点調整が行われる場合がある、ということです。
いずれにせよ、合格圏内の点数を取って不利になることはありませんから、まずは合格点を取ることに集中しましょう!
最後に
過去問が圧倒的に少ない共通テストは不安が大きいと思いますが、私の記事を参考にベストを尽くしてください。
やりきった、と思えると、例え失敗しても後悔は生まれないものです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!